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- 大和敏彦のデジタル未来予測
グローバルで激化するFintechのサービス競争【第30回】
東南アジアがFintechのホットスポットに
まずは2019年版のLeading50に選ばれた上位5社の事業内容を見てみよう(図2)。
1位:中国Ant Financial
Alibabaグループのファイナンシャルサービス会社である。「Alipay」を提供する世界最大の決済サービス提供会社だ。決済以外にも銀行業務、保険サービス、資産運用サービス、信用情報サービスをスーパーアプリとして提供している。
2位:シンガポールGrab
マレーシア生まれの配車サービス提供会社である。三菱UFJ銀行が資本提携を発表した。現在は、配車サービスを軸に獲得した東南アジア最大の顧客基盤をもとに、データとテクノロジーを活用した決済サービスをはじめとした金融事業に取り組んでいる。1億7000万人のユーザーを抱える。
3位:中国JD Digits
リスクマネジメントや、銀行や企業のオペレーションを支援する幅広いサービスを提供している。AIやビッグデータ、クラウド、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ブロックチェーンなどのテクノロジーと業界に関する知識を強みにしている。
4位:インドネシアGoJek
バイクのライドシェアサービスからスタートした。現在は「Gopay」「Gobills」「Gopoints」「Paylater」「Gopulsa」など20を超えるファイナンシャルサービスを提供するプラットフォームを運営している。東南アジアに数百万人のユーザーを持つ。
5位:インドPaytm
インド最大のデジタル決済サービス提供会社。3億8000万人のユーザーと1200万の業者が参加している。
このようにLeading100のトップ5は、すべてアジア企業である。Ant FinancialのようなFintech企業だけでなく、GrabやGojekなど配車サービスで成功した企業が、その成功による顧客基盤を活用しFintech分野へと手を広げ、スーパーアプリ化やプラットフォーム化を実現して急成長した。
スーパーアプリ化によって、それぞれのサービスの利便性と、統合による利便性が生まれ、使用場面や使用場所がさらに増すことで寡占が進む。クレジットカードや電子マネーの利用が遅れていたためにデジタル決済がスムースに受け入れられたことも急成長の要因になっている。資金調達の面からも東南アジアがホットスポットになっている。
「チャレンジャーバンク」という新分野も登場
2019年のFintech100に選ばれた100社を分野別にみると、決済ビジネス関連が27社で最も多い。資産運用・資産保全関連が19社、保険関連が17社、融資関連が15社である。複数分野をカバーする会社も13社ある。
複数分野をカバーする会社の多くは、スーパーアプリやプラットフォームを提供している会社だ。これら以外にも、幅広い銀行業務を提供する「チャレンジャーバンク」という分野も登場している。
チャレンジャーバンクのモデルは、銀行業務ライセンスを取得し、当座預金や普通預金、住宅ローンなど、既存銀行と同じサービスのすべてをモバイルアプリ上で提供するもので、既存銀行から完全に独立した事業を展開している。特定の業界や地域を対象とした「垂直型チャレンジャーバンク」と呼ばれる展開も広がりつつあり、規制緩和の流れが追い風になっている。