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グローバルで激化するFintechのサービス競争【第30回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2020年3月23日

前回、Fintechによるデジタル革命によって金融業界で起きているインパクトについて述べた。破壊的な変革をチャンスだととらえ、他業界からの参入や、新しいアイデアやビジネスモデルを持つベンチャー企業が世界中で活躍し始めている。今回は、Fintechのグローバルな動きから、Fintechの本質を検証してみたい。

 グローバルではFintechによる変化と、それに対応するための動きが次々と起こっている。たとえば三菱UFJ銀行は先頃、東南アジアにおける配車サービス最大手であるシンガポールのGrabと資本提携を結んだ。米大手銀行のモルガン・スタンレーは、米ネット証券大手のEトレードの買収を発表した。

 図1は、Fintechとして揚げられている分野を示したものだ。Fintechは、既存の金融分野のデジタル化や、AI(人工知能)などのテクノロジー、新しいビジネスモデルによる変革にとどまらない。仮想通貨(暗号資産)と、それに伴うビジネス変革や、範囲が拡大する規制、およびそれらを管理するRegtechなどへと変革の波が広がっている。

図1:Fintechの分野は拡大している

 投資も増えている。2019年第3四半期のベンチャー企業への投資額は、2017年全体の投資額を越える246億ドルだった。これは、中国Ant Financialsへの巨額な投資があった年を除けば過去最高だ。その結果、Fintechユニコーンの数は58社に達し、その総額は2135憶ドルに上る(米CBinsights調べ)。

 仮想通貨・デジタル通貨に関しては、米Facebookが中心になって進めている仮想通貨「リブラ」と、各国の中央銀行が中心になって進むデジタル通貨の両軸で進んでいる。デジタル化により電子決済などを活用したビジネス変革にもつながるだけに、そのインパクトは大きい。

 たとえば中国人民銀行は2020年1月9日、デジタル通貨のデザインから業界標準の設定、想定される機能の開発、総合テストのプロセス策定に関してまでを、ほぼ完了したと発表した。

 グローバルなデジタル通貨である「CBDC(Central Bank Digital Currency)」の推進に向けて「CBDCの活用可能性を評価するためのグループ」も立ち上がった。同グループには、日本銀行と、EU中央銀行、イングランド銀行、スウェーデン中銀のリクスバンク、スイス国民銀行、カナダ銀行といった中央銀行と、国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)が参加する。スウェーデンはすでに実験開始を発表している。

 Fintechで成長している分野や期待される分野として、米コンサルティング会社のKPMGは『Fintech Global 100(Fintech100)』を毎年、発表している。Fintech100は、マーケットリーダーのトップ50である「Leading50」と、革新的な製品やソリューション持つ新興企業の「Emerging50」からなる。