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スマートシティが実現する住民への価値【第44回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2021年5月17日

生活全体を対象にデジタル化を推進するスマートシティ。その構想や構築が世界中で広がっている。今回は、スマートシティの実践例から、その価値を考えてみたい。

 先端テクノロジーを生かした未来都市「スーパーシティ」の実現に向けて、改正国家戦略特区法が2020年5月の国会で可決成立した。政府は、未来社会のコンセプトである「Society 5.0(超スマート社会)」の総合的ショーケースとしてスマートシティの取り組みを推進する。その意義や必要性、導入効果、および進め方を『スマートシティガイドブック』として、まとめている。

 トヨタ自動車は2020年のCESで発表した「Woven City」の建設を静岡県裾野市で進めている。あらゆるモノやサービスがつながって人々の生活を支える「コネクティッドシティ」の実証都市である。

スマートシティ関連のテクノロジー市場が伸張

 スマートシティの議論では、AI(人工知能)や自動運転など、テクノロジーの議論が先行するケースが多い。実際、スマートシティを構築するためのテクノロジーとしては、AIや機械学習,IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とセンサー、ネットワーク、クラウド、データベースやデータ連携基盤などが使われる。

 さらに自動運転や様々なアプリケーションに加え、ブロックチェーンやデジタルツインの活用も見られる。個人情報など重要情報を対象にしたセキュリティ対策や認証基盤も必要になる。

 スマートシティの広がりによって、これら関連テクノロジーの市場は全世界で、2018年度の81億ドルが2023年度には189億5000万ドルと倍以上に拡大すると予測されている。世界のIoTプロジェクトのなかでも、スマートシティ関連が23%を占め、製造分野の17%を抑えてトップになっている(米Statista調べ)。

 しかし、テクノロジーの活用は重要ではあるが、テクノロジー自身は手段であって目的ではない。テクノロジーを活用したからといってスマートシティができあがるわけではない。重要なのは「何を目指してスマートシティを構築するか」である。

 例えば米PwCはスマートシティを「社会問題を解決する“仕組み”を有し、新たなテクノロジーを活用しつつ、継続的に住民満足度を高め続ける街」と定義する。この定義のように、目的とする解決すべき社会問題の明確化と、それを解決するための仕組み構築とテクノロジー活用、さらに、その解決によって得られる価値の継続的な発展が、スマートシティとしては不可欠だ。