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暗号通貨からデジタル通貨へ、ブロックチェーンが広げるDX【第49回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2021年10月18日

デジタル通貨を支えるプラットフォーム整備が進む

 CBDC発行の要件として、現金と同様に扱えるための「ユニバーサルアクセス」と「強靭性」が挙げられる。ユニバーサルアクセスとは、誰もが、いつでも、どこでも確実に使えること。強靭性は、偽造や改竄、盗難といった不正が防げ、災害時でも使用が停止したり紛失したりしないことである。

 ユニバーサルアクセスや強靭性を実現するためのプラットフォームとして、中国のDCEPをはじめ、選ばれているのがブロックチェーンだ。ネットワーク化された複数の分散環境において取引記録を暗号化し同時に管理することでユニバーサルアクセスや強靭性を実現できるためだ。

 加えて、CBDCのように、社会やビジネスの中核を支える重要なプラットフォームとしては、高い信頼性や膨大なトランザクションへの対応、迅速な応答性も要求される。

 そうしたプラットフォーム構築に向けた取り組みを、中国のDCEPが利用する「BSN(Blockchain based Service Network)」と、三菱UFJファイナンシャル・グループが展開する「GO-NET」に見てみよう。

 BSNは、中国がDCEPの発行に必要なシステムを開発・運用・保守・監視のするためのインフラとして利用するブロックチェーンを使ったプラットフォームだ。政府機関や主要企業が中心になって開発し商業運用している。様々なサービスを実行するためのサーバーやストレージ、ネットワークのほかプログラミングツールなどの開発環境を提供する。

 BSNは現在、中国内全省の40都市に分散ノードが確立されており、100都市にまで拡大することが見込まれている。海外へもノードは展開され、東京にも設置されている。分散するノードは高速ネットワークで結ばれる。

 GO-NETは、Global Open Network Japanが提供するブロックチェーンのプラットフォームであり、毎秒10万件の処理能力とエンドツーエンドで約2秒以内のレスポンスを実現した、高信頼・大容量・高速なペイメントネットワークを提供している。

 Global Open Network Japanは、三菱UFJフィナンシャル・グループと米Akamai Technologiesの合弁会社だ。そしてAkamaiは、CDN(Contents Delivery Network)やネットワークセキュリティのリーダー企業であり、世界136カ国に約27万5000台の超分散型エッジプラットフォームを運用している。その技術とブロックチェーンの組み合わせによってGO-NETは実現されている。

ブロックチェーンはDXを進展させる重要なプラットフォームに

 BSNやGO-NETのようなブロックチェーンサービスを実現するためのサービスは、米AWS(Amazon Web Services)、米Microsoft、米IBMなども提供している。これらサービスを利用すれば、ブロックチェーンを使ったサービスを迅速に開発でき、安価に運用できる。

 今後は、ブロークチェーン同士、およびブロックチェーンと他システムをつなぐインタフェースも強化されていく。ブロックチェーンは、DXを進展させるための重要なプラットフォームになっていく。

 ブロックチェーンが引き起こしている変化に対応するとともに、そのユースケースから機能や活用分野を参考に、DXのためのプラットフォームの1つとして活用する必要がある。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。