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- 大和敏彦のデジタル未来予測
暗号通貨からデジタル通貨へ、ブロックチェーンが広げるDX【第49回】
『プラットフォームとして活用が進むブロックチェーン【第14回】』で述べたように、ブロックチェーンが今、デジタルトランスフォーメーション(DX)のためのプラットフォームとしての地盤を築きつつある。今回は、暗号資産やデジタル通貨の動きと共に、プラットフォームとしてのブロックチェーンおよび分散台帳管理(DLT:Distributed Ledger Technology)の動向とインパクトを考えてみたい。
ブロックチェーンは今、幅広い分野で使われている(図1)。その活用は、暗号通貨から金融分野に広がり、金融以外の幅広い分野でもプラットフォームとしての地位を確立しつつある。その市場規模は、2027年には720億米ドルに達すると予想され、2021年から2027年までのCAGR(年平均成長率)は51.8%に上る(グローバルインフォメーション調べ)。
ブロックチェーン活用で大きな位置を占める、同技術を生み出した暗号資産の動向と、より大きな影響が考えられる各国中央銀行が発行するデジタル通貨の動きを見てみたい。
投資対象としての色合いを増す暗号資産
ブロックチェーンは、暗号資産「Bitcoin(ビットコイン)」を支えるプラットフォームとして登場し、その後様々な「仮想通貨」が生み出されてきた。暗号資産は元々、仮想通貨としての活用が狙いだった。だが、その価格変動は激しく、通貨というよりも投資対象としての色合いが濃くなっている。最近も下記のとおり大きな変動をしている。
2021年6月 :中国がマイニングの禁止を発表し、暗号通貨が下落した。マイニングは、ビットコインなどを統治なしで運用するための仕組みで、膨大な電力を消費する。中国はマイニングの約50%強を占めており、中止理由の1つに脱炭素対策を挙げる。
2021年9月 :中国の中央銀行である中国人民銀行が突然、暗号資産の決済や取引情報の提供サービスなどを全面的に禁止すると発表した。海外の取引所が中国国内でサービスを提供することも禁止し、暗号通貨は大きく下落した。
2021年9月 :エルサルバドルがビットコインを法定通貨とし、使用の開始と同時に価値が下落した。
このように様々な理由によって価格が大きく変動する暗号資産は、決済手段としての使用が進まない。この問題を解決すべく生まれたのが「ステーブルコイン」と呼ばれる価格変動のない暗号通貨だ。
ステーブルコインには、(1)米ドルや中国元、円などの法定通貨との交換比率を固定化した「法定通貨担保型」と、(2)暗号資産との交換比率を一定化した「暗号資産担保型」、(3)通貨供給量の調整で価格を安定させる「無担保型」がある。
安定性の面では法定通貨担保型が有力だ。その中で大きな注目を集めるのが米Facebookの動きである。Facebookは2019年、暗号通貨「Libra(リブラ)」のホワイトペーパーを発表したが、同プロジェクトは世界中の規制当局からの批判を受けた。その後、複数企業の脱会があり、プロジェクト名を含め計画を大きく変更してきた。
最新プロジェクトでは、米ドルに連動するステーブルコイン「Diem(ディエム」として、暗号資産に積極的に取り組むシルバーゲート銀行(Silvergate Bank)と提携し進めている。シルバーゲート銀行は「ディエムUSD」の公式発行者として、担保となる準備金も管理する。法定通貨との交換比率を一定化することで、より「通貨」に近づける。