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メタバースがもたらすインパクトとビジネスチャンス【第51回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2021年12月20日

現インターネットをも変える次世代プラットフォームに

 メタバースへの各社の反応はポジティブだ。今日のインターネットを大きく変え、次世代のソーシャルメディアや、ストリーミングサービス、ゲームの新しいプラットフォームになる可能性に強い関心を寄せる。では具体的に、どのようなビジネスが考えられるのか。

 図1に想定できるビジネス分野を示す。これらのうち今回は、メタバースによる仮想空間の提供、ゲーム/エンタテイメント、デジタルツイン活用、コミュニケーションの可能性について考えてみたい。

図1:メタバースのビジネス領域と関連ビジネスの領域

仮想空間の提供

 Metaが進めようとしているように、次世代SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の場や、ゲームなどの仮想空間としてメタバースが提供される。そこでは、コミュニケーションや、ソーシャルなつながりが実現し、仮想空間内の土地や建物の販売、広告などのマーケティング、EC(Electric Commerce:電子商取引)での販売、イベント、コンテンツ販売などのビジネスが展開され、仮想通貨によって決済される。

 メタバースの一例に、KDDIなどが立ち上げた「バーチャル渋谷」がある。リアルに再現された渋谷の街中をアバターとして歩き回り、スポーツ観戦や音楽ライブ、展示会などのイベントを体験できる。アバター同士のコミュニケーションも可能だ。

 このようなメタバースを継続して存続させるためには、ユーザーが価値を感じ、アクティブユーザーになる仕掛けの提供とともに、マネタイズの問題を解決する必要がある。2003年の時点で、3D(3次元)仮想世界を提供するビジネスを始めた「セカンドライフ」の成り行きが参考になるだろう。

 セカンドライフでもユーザーは、アバターはもちろん、景色や建物、ファッションなどのデジタルコンテンツを制作・販売できた。アバター同士がコミュニケーションでき、コンサートや、ショー、セミナーといったイベントのほか、教室、画廊、博物館、放送局などが提供され、現実通貨に換金できる仮想通貨が使われた。

 2007年ごろからブームが過熱し、多くの大手企業が広報メディアとしての活用を目指してセカンドライフに参入し、マネタイズにも成功した。しかし、ビジネス活用やマネートレードの側面が顕在化してきたころからアクティブユーザーが減り、企業もマーケティング効果が得られなくなったとして撤退した。

 セカンドライフの時代に比べ現在は、コロナ禍でオンラインコミュニケーションやオンラインイベント、ECの活用場面は広がっている。そのためのテクノロジーも進んでいる。決済面でも、暗号通貨や、デジタルなアートやコンテンツ、音楽などの売買に使えるNFT(Non Fungible Tokens)の仕組みも現れている。ビジネスにするためには、それらを活用し、ユーザー価値をさらに高めていく必要がある。

 日常使われるツールとしてアクティブユーザーを広げると同時に、ビジネスやマネーゲームの側面が高まらないようにすることが重要になる。VRが特徴として強調されているが、SNSとしてアクティブユーザーを増やすためには、3D/2Dのハイブリッドを実現し、スマホから、どこでも使えることも重要だ。

ゲーム/エンタテイメント

 コロナ禍のステイホームで利用が広がったライブ配信やゲームは、メタバース化でさらに進化し、ユーザーを広げる可能性がある。『広がるxR(VR/AR/MR/SR)のビジネスチャンス【第40回】』で取り上げたように、ゲームではxRの活用が進んでいる。

 一方、「あつまれどうぶつの森」のようなメタバースは既に広く使われている。仮想ゲームの世界市場は、2020年の約1800億ドルが2025年には4000億ドルになると米Grayscaleは予測する。メタバース活用の広がりによって、VRの進化や、HMDの進化や廉価化によって、ゲームやエンタテイメントも、ますます進化する。