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メタバースがもたらすインパクトとビジネスチャンス【第51回】
仮想の3次元空間の総称である「メタバース(Metaverse)」への関心が一気に高まっている。なかでも、米Facebookが、その社名を「Meta Platforms(Meta)」に変更し、メタバースを次の柱にすると発表したことが、その動きを押し上げた。今回は、Meta(旧Facebook)の動きの背景と、メタバースのインパクトや、そのビジネスを考えてみたい。
「メタバース(Metaverse)」は、超越・高次という意味を示す「Meta」と、宇宙を意味する「Universe」を組み合わせた造語で、仮想の3次元空間の総称である。メタバースでは、自分の分身であるアバターを操作することで、移動や他のアバターとのコミュニケーションなどが可能になる。
Facebookの「Meta」への社名変更がメタバースシフトを加速
メタバースへの関心が高まるなか、米Facebookが社名を「Meta Platforms(Meta)」に変更し、メタバースを次の事業の柱にしていくと発表した。ザッカーバーグCEOは、「ソーシャルテクノロジーの長い歴史における次なる進化で、様々なオンライン上でのソーシャル体験を掛け合わせたものになる」と強調する。
旧Facebookの時価総額は7880億ドル(2021年11月26日時点)と世界上位に位置し、全世界での従業員数が1万5000人以上、主力サービス「Facebook」の月間アクティブユーザー数が20億人を越える。それだけの企業が、その社名をFacebookからMetaへ変更したことは大きなニュースになった。
Metaの戦略転換には、主力サービス「Facebook」の現状が影響している。その圧倒的な支配力と影響力に加え、ユーザーよりビジネスを優先する姿勢や有害コンテンツへの対応などが、内部告発や政府、業界で批判されている。ビジネスとしても、新規ユーザー数の伸びが止まり、特に若年層の獲得が進んでいない。こうしたマイナスイメージの刷新も社名変更の背景にある。
ザッカーバーグ氏は、メタバースの適用分野として、「ソーシャルなつながり、エンタテインメント、ゲーム、フィットネス、仕事、教育、コマースなど」を挙げる。これらは、3次元のVR(Virtual Reality:仮想現実)空間上に展開され、時には現実世界にも投影される。
メタバースでのVR活用が広がることは、ゴーグル型HMD(Head Mount Display)を展開するMetaにとって、ビジネス面でもメリットがある。2014年にHMDメーカーの米Oculus VRを買収し、HMD市場では70%のシェアを持っており、VR活用が増えることはHMDビジネスの拡大につながる。Metaは、HMD以外にもメタバースやAI(人工知能)などの関連技術に積極的に投資すると発表している。
メタバースの市場規模をMetaは、「10年以内に10億人にリーチさせ、数千億ドル規模の電子取引を提供し、数百万人規模のクリエイターや開発者の雇用を支える」とする。投資銀行の米Morgan Stanleyは、メタバースの獲得可能な市場規模を8兆ドルと予測する。
こうしたMetaの発表を受けて、多くの企業がメタバースに関する発表を続けている。 例えば米Disneyは、「Disneyが進めてきた物理的な世界とデジタル世界の結びつきを、さらに境界のないものにする」として、メタバースへの参入計画を発表した。
米Microsoftは、VRとそのアプリケーションだけでなく、それらを支えるAIやIoT(モノのインターネット)、Map、ビッグデータ、デジタルツインなどを加味し、メタバースソリューションとして強化する計画だ。
CEOのナデラ氏は、「メタバースは物理的な世界とデジタルの世界を横断した共有体験を実現できる。人々がデジタル環境で出会い、より快適に会議ができ、グローバルにクリエイティブなコラボレーションを支援できる」と述べている。