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メタバースがもたらすインパクトとビジネスチャンス【第51回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2021年12月20日

デジタルツイン活用

 デジタルツインは、現実世界と同じものを仮想空間上に作り上げ、それをシミュレーションやモニタリングに使うソリューションだ。「エンジニアのためのメタバース」とも呼ばれ、ビジネス活用がすでに始まっている。実際に製造業では、デジタルツインを使った開発や製造、コミュニケーションがなされている。

 例えば米NVIDIAが提供する「Omunivarse」と呼ぶメタバースのためのプラットフォームでは、3Dコンテンツの共有や、リアルタイムのコラボレーションによる共同開発、物理法則の再現やモデル化による自動化のテストや検証、工場のシミュレーションができる。

 このOmunivarseを独BMWは工場で使い始めている。生産や製造業務のシミュレーション、ロボットのプログラミング、現場での作業指示の連携などにより、生産計画にかかる時間を30%短縮したとする。

 今後もデジタルツインによるシミュレーションや分析を計画から設計、運用までに適用する動きは多くの分野で広がっていくだろう。

コミュニケーション/コラボレーション

 新しいコミュニケーションツールとして、Metaは2021年9月に「Horizon Workrooms」を発表している。「チームがつながり、連携して働けるVRワークプレイス」との触れ込みで、アバターのカスタマイズや部屋のレイアウト変更などができる。

 Microsoftは2022年に「Mesh for Teams」を提供する予定だ。没入感のある3Dオンラインミーティングによって、遠隔地にいるユーザーが仮想空間内でコラボレーションできる。2Dのコンテンツも活用できる。

 コミュニケーション環境としては、奥行きを出せるオーディオや、没入感を高めるVRによって、あたかも同じ場所にいるような感覚を高められる。よりリアルに近いコミュニケーションを実現することで、リモートワークやリモートコラボレーションをさらに進化させる。

メタバースのための技術の進化が活用範囲を広げる

 このようにメタバースの展開においては、新世代SNSであればビジネスモデルやユーザーへの提供価値によってアクティブユーザーを増やせるかどうかがカギになる。一方でゲームやエンタテイメント、デジタルツイン、コミュニケーション分野ではメタバースの活用は始まっており、さらに広がっていく。

 今後は、メタバースブームの中で、VR技術の進化やVRコンテンツの標準化が進み、AIやデジタルツインなどの技術も進化する。そうした技術革新が、他分野への活用を広げていくだろう。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。