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生成AIのプラットフォーム化と特化型AI【第69回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2023年6月19日

現在のChatGPTはシンプルなマネタイズの段階にある

 では、ChatGPTのマネタイズはどうであろうか。まず、生成AIを動かすためには膨大なコンピューターパワーが必要である。例えば米Microsoftは、ChatGPTのために開発元である米OpenAI専用リソースとして、スーパーコンピューターを開発し提供する。28万5000基を超えるCPUコアと1万基のGPUを搭載し、各GPUサーバーを400ギガビット/秒という高速ネットワークで接続している。

 このスーパーコンピューターは、開発費が高額なだけでなく、その運用コストは最大70万ドル(約9450万円。1ドル135円換算、以下同)にも及ぶとされる(米SemiAnalysis調べ)。生成AIを開発し、それを提供するためには、多大な費用を必要とするわけだ。

 そうして開発したChatGPTのビジネスモデルは現在、プラットフォームとしてのシンプルなマネタイズしかなされていない。無料モデルと、最新機能が使える「ChatGPT+(プラス)」の有料モデル、さらにAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用して使う有料モデルがある。無料モデルは、利用者の拡大やユースケースの増加、経験の蓄積につながっている。

 ChatGPT+の利用料は月額20ドル(約2700円)、API利用時は、利用に応じた言葉を「トークン」という単位に分解し、1000トークンが0.03ドル(約4円)から始まる語数によって課金される。

 開発元であるOpenAIのビジョンは、自然言語処理などで最先端の研究に携わり、AI技術の進歩をうながすことで、より多くの人がAI技術を利用できるようにデータやツールを提供することである。そのための投資額は増加している。

 生成AIへの投資額は2022年に全体で26億ドルだが、うち20億ドルがOpenAIへの投資であり、当然最大規模である(米CB Insights調べ)。2023年にはMicrosoftが、GPTやChatGPTの開発や普及のためにOpenAIに複数年で100億ドルの投資を決めた。企業の投資が増えることでマネタイズの要求は高まっていく。

 投資元のMicrosoftは、同社の検索エンジン「Bing」との統合や、「Teams」「Co-Pilot」といった製品での活用など広範囲な製品にGPTを活用し製品の差別化を図ろうとしている。

 開発から運用、トレーニングやビジネス展開のコストまでをビジネスモデルによって稼ぎ出せなければ、ビジネスとしての継続は難しくなる。運用コストを削減するためのAIチップの開発なども進められているが、応用を増やし有料ユーザー数を増やすことや、レベニューシェアのようなモデルも必要になるかもしれない。

プラットフォーム化する生成AIが特化型AIを置き換えていく

 特化型AIは、それ専用にデータを機械学習したりシステムを開発したりする必要がある。そのため新機能を追加する際には、データベースの再構築やシステムのデザインに時間がかかることが多い。

 これに対し生成AIは、膨大なデータを学習して大規模言語モデル(LLM)を作ることによって、さまざまな質問を認識し、広範囲な問題やタスクに対応できるプラットフォームとして機能する。

 実際ChatGPTは、ベースとなるデータは学習済みであり、対話というUI(User Interface)を備えている。APIやプラグインも提供され、プラグインを使うことで最新情報を取得したり計算を実行したりと外部のサービスと連携できる。すわわちChatGPTはプラットフォームとしての役割を持っている。

 ただ、よりさまざまな要求に答えるためには、莫大なコンピュータリソースによるコンピューティングパワーと、より多くのデータの収集とトレーニング、および、それらの運用が必要になる。そのすべてを準備できるのは一部の企業になる。生成AIの能力が高まりプラットフォームとして役割が高まれば特化型AIの置き換えも始まるだけに、生成AIのさらなる独占が進む。

 既に、ChatGPTが登場したことで、特化型AIのAlexaから乗り換える例が出てきている。例えばトヨタ自動車は、人気の高い車種の2023年版において、車内でAlexaを操作可能にしていたアプリケーションのサポートを打ち切り、ChatGPTとの統合を検討している。

 今後も、生成AIをプラットフォームにしたシステムが特化型AIを置き換えていく例は増えていくだろう。特化型AIの使用においては、ニッチな分野で、その特徴を明確にし、最新状況へ対応するためのデータ活用やトレーニングを続ける必要がある。