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生成AIのプラットフォーム化と特化型AI【第69回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2023年6月19日

利用企業が生成AI活用に向けてなすべき3つのこと

 生成AIは今後、世の中の仕事を大きく変えていく可能性がある。OpenAIと米ペンシルベニア大学の研究者による調査によれば、GPTの導入により「米国の労働者の80%が自分の仕事の10%に影響を受ける可能性があり、約19%の労働者は自分の仕事の少なくとも50%に影響を受ける可能性がある」。そうした状況下で利用者としてやらなければならないことは何であろうか。以下に3点を挙げる(図1)。

図1:生成AI活用に向けて利用企業がなすべき3点

(1)生成AIを使ってみる

 生成AIの使い方や応用例が日々、さまざまに発表されている。それらを参考に、自らも生成AIを使ってみたうえで、効率化や生産性向上など自社での活用方法や、新しいサービスやビジネスモデルなどの可能性や応用について議論すべきである。ChatGPTには無料モデルもあり、簡単に使える。

 使用する際は、生成AIのリスクを理解し、使用ルールなどによって、そのリスクを軽減しなければならない。

(2)生成AIの動向を把握する

 生成AIは常に進化し、そのモデルも進化・改良が続いている。それらの情報を収集すると共に、発表されている生成AIの使い方や応用を見ていく必要がある。ChatGPTだけでなく競合の動きも把握し、それらの動向を基に自社での生成AI活用の方針を決める必要がある。

 動向としては規制の動きも把握しなければならない。生成AIの能力を脅威とみなしたり、AI技術がもたらす負の側面を補うための規制が出てきたりする可能性がある。AI技術活用による格差や、サイバー攻撃への利用といった不法な活用、個人情報の漏えい、プライバシー侵害、偽情報の拡散などが考えられている。

(3)特化型AIを見直す

 特化型AIを使っている場合や開発ようとしている場合、それを生成AIをプラットフォームとして使えば、どうなるかを考える必要がある。プラットフォーム上にデータやシステムを追加するほうが、適用範囲を広げたり、開発・運用コストを削減したりできる可能性があるからだ。特化型AIと生成AIの強み・弱みを判断したうえでの決定が必要である。

 このように生成AIは、従来の対話型AIの能力をはるかに越え、AIに関する考え方を大きく変え、仕事や生活そのものを変えていく。生成AIをどう活用し発展させていくのかの知恵が、AIのさらなる発展の基礎になる。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。