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デジタルトークン化が、さまざまな資産の流動性を高める【第72回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2023年9月19日

現実世界の資産に対する権利をデジタルトークン化する、すなわち、アセットのトークナイゼーション(トークン化)の動きが広がっている。資産に対する権利をブロックチェーンや分散型台帳(DLT)上のデジタルトークンに替える。デジタルトークンは、流通が容易で処理コストが低い。それにより、既存ビジネスを変えたり新ビジネスを立ち上げたりが可能になる。今回は、トークン化と、それを支えるブロックチェーンの進化を見てみたい。

 アセットのトークナイゼーション(トークン化)は、通貨や金融資産だけでなく、ゲームの世界では早くから使われてきた最近は、「Game(ゲーム)」に「Defi(分散型金融)」の要素を掛け合わせた「GameFi」と呼ばれる動きへと広がっている。アセットのトークン化は、図1に示すようなメリットをもたらす。

図1:アセットのトークン化のメリット

メリット1:透明性

 トークン化により、取引記録が残りトレースが可能になる。多くのブロックチェーンは基本的に公開されているため、記録のすべてをオープンに追跡・監査できる。ブロックチェーンにより“不変の記録”が可能になり、記録保持の信頼性も高まり、保持コストを最小限に抑えられる。

メリット2:自動化、効率化

 デジタル化により自動化が可能になる。自動化やプロセスのシステム化によって効率を上げられる。取引中間者が不要になりスピードが速まり、仲介手数料も必要なくなる。

メリット3:流動化

 資産のトークン化により、広く利用可能な取引所での売買が可能になり、資産の流動性が高まり、市場参加者や投資機会を増やせる。アクセスも容易になり、迅速で効率的な精算や決済ができる。

 トークン化で処理コストが下がるため、高価な資産を小口化したトークン化が可能になる。少額での所有権が実現できれば、投資への障壁が低下し、個人投資家が、以前は手が届かなかった高額資産にアクセスできるようになる。結果、グローバルな金融市場への資金供給ができるようになる。

メリット4:セキュリティ

 所有権や取引履歴をブロックチェーンに残すことで、改ざんや偽造のリスクを低減できる。

 これらのメリットから、さまざまなものがトークン化され、それに伴うシステム化が進む。通貨や株式、国庫短期証券、クレジット、コモディティ、炭素クレジット、知的財産、美術品などがトークン化されている。