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「Apple Vision Pro」などHMDの進化がメタバースの利用を加速する【第78回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2024年3月18日

現実世界では難しいことの体験が可能に

 VR技術を利用することのメリットを改めて考えてみたい。以下のようなメリットが挙げられる(図1)。

図1:MLBにおいてデータ活用が起こした変化

メリット1=時間や場所に関わらずリアルに近い体験ができる :場所や時間の制約を受けることなく疑似体験ができる。危険な行動でも事故やケガのリスクなしに経験できる。ライブやスポーツなどが、どこからでも視聴できる

メリット2=自由な表現ができる :実際に存在しないものでもリアルに近いイメージで3D(3次元)表現ができる。未完成のものも経験できる。3Dを使ったデザインや議論、実空間とデジタルを合わせた使い方や、ゲームのような展開もできる

メリット3=実際に比べ安価である :実際に移動することなく経験したり、繰り返し使えたりが可能になる

メリット4=時間の有効活用ができる :移動時間がかからず、できる時間に経験ができる

 このようにVR技術を使えば、現実では体験が難しいことを体験できたり、言葉で説明するよりも上手く伝えたりが可能になる。AR技術なら、現実の映像に情報を付加することもできる。

 これらのメリットを活かし、ビジネス用途でもメタバースの活用は進んでいる。例えばメタが、英国と米国における従業員とビジネスリーダーに対して実施したインタビューでは、過去1年間にビジネスリーダーの約74%が「技術予算の一部をAR/VR技術あるいはメタバースへの投資に充てている」という。

 製造業であればメタバースは、作業手順の指示や遠隔指導、製品の視覚化、デザイン作成のコラボレーションやバーチャルミーティングに使われている。医療分野では、トレーニングと教育に重要な役割を果たしている。VRを使うことで世界中どこからでも共同で手技を練習でき、手技の品質や効率を高められる。VRを使ったトレーニングもいつでも可能である。

VRデバイス「HMD」の技術的発展で身体への影響も軽減

 VR技術を使うためには「HMD(Head Mount Display)」と呼ばれるVRデバイスが必要になる。HMDの使用では、本体重量による疲れや、「VR酔い」と言われるVR動画を見ることによる、めまいやふらつき、不快感、視力の疲労などの課題が挙げられてきた。これらの問題は軽減されてきている。米メタ(旧Facebook)は2023年6月に新製品「Quest3」を、米Appleは2024年2月に同社初のHMD「Apple Vision Pro」を、それぞれ発売した。

メタ:エンタメに加えバーチャル会議なども想定

 メタのQuest3の重さは525グラムである。ゲームの実施やVRスタジオでのダンスを楽しめる。バスケットボールの米NBAの試合を、まるでコートサイドから見るように観戦できる。

 平な面をVR技術でピアノのキーボードに替えて、その場で練習ができる。指の位置やタイミングを教えたりするアプリケーションが提供されている。野外コンサートを楽しむためやバーチャル会議に参加するなど、さまざまなアプリケーションが既に登場している。

 バーチャル会議では、仮想オフィスに集まって交流したり、会議に参加してチームから最新状況を聞いたり、アイデアを出し合ったり、ドキュメントを作成したりができる。