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5Gの社会インフラ化に向けたロードマップ【第84回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2024年9月23日

社会インフラとしての5Gの要件【第54回】』では、社会インフラとしての5G(第5世代移動体通信)の重要性と要件を述べた。その5Gの活用が今、スマートフォンからビジネスへと広がろうとしている。加えて、生成AI(人工知能)技術の登場によりAI技術の応用が広がったことで、それを支える社会インフラとしての5Gの重要性が高まっている。今回は、社会インフラとして発展する5Gのロードマップを見てみたい。

 光ファイバーやモバイルといったネットワークは、求められる接続性や速度、低遅延などの品質を実現する形で進化してきた。インターネットがリーズナブルなコストでのネットワーク接続を可能にしたことで、クラウドやクラウドを活用したアプリケーション、モバイルによるキャッシュレス決済など、さまざまな応用分野が生まれ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させた。

5GとAIの組み合わせで新たな価値が生まれる

 ネットワークの価値は、何かと何かを“つなぐ”ことで生まれる。AI(人工知能)技術であれば、知識の活用やデータの分析、自動化、デジタル画像の応用などによって、その価値が生まれる。5G(第5世代移動体通信)とAIによって、これらの価値が実現され、多くの人が使うことで世の中は大きく変わっていく。

 AIモデルの構築においても、高速・大容量のネットワークの価値は大きい。大量のセンサーやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)機器を接続し、そこから得たデータを機械学習することで精度の高いAIモデルが構築できるからだ。

 AI機能は、スマホやPCなどエッジへの搭載が始まっている。だが、大規模AIの機能を使うためにはクラウド上のAIが必要であり、その機能をどこからでも使えるネットワークが必要になる。これらに5Gが貢献する。

 モバイル通信業者からなる団体GSMA(Global System for Mobile Communication Association)の『The Mobile Economy 2024』によると、2024年1月の時点で世界101カ国の261事業者が商用5Gサービスを開始している。さらに64市場の90以上の事業者が今後数年間に5Gサービスを開始すると表明している。

 5G接続数は2023年末時点の16億が2030年には55億に増えるとされている。IoTにも活用され、モバイルネットワークを使ったIoT機器の数は、2023年現在の35億台が2023年には58億台になると予測される。

 5Gの推進が進んでいるのが北アメリカと中国だ。5Gの比率は2023年実績で53%と45%、2023年には、それぞれ90%と88%になると予想されている。このように5Gの浸透は急速に進んでいる。

ビジネス変革には本来の5Gの機能が必要

 5G本来の機能である高速性・大容量、低遅延、多数同時接続を実現したネットワークを低額で使えれば、屋内外でワイアレスによる接続が可能になり、さまざまな使い方によるDXを実現する。しかし現状は5Gの導入期で4G(第4世代移動体通信)の拡張程度の活用しかできていない。ビジネス変革に使うには、本来の5Gの機能の実現が必要である。社会インフラとしての5Gのロードマップを図1に示す。

図1:社会インフラとしての5Gのロードマップ