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製造業へのロボット/AI活用で躍進する中国【第106回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2026年7月21日

人型ロボット(ヒューマノイド)の開発競争が熱を帯びている。『人型ロボット(ヒューマノイド)との協働が始まる【第93回】』で触れたように、世界で最も進んでいるのが中国だ。中国がロボット開発で躍進している理由を見てみたい。

 産業用ロボットは、特定の作業に合わせて、その形状や動作を最適化し、一般に高精度かつ高速に動作する。耐久性や安定性、長時間の稼働も求められる。一方、より広い分野でロボットを使うためには、人間と同じ形状で人間と同等の動きができる人型ロボット(ヒューマノイド)が必要になる。人型ロボットは、汎用性を持ち既存の工場設備を大きく改造しなくても使えるからだ。

人型ロボットの出荷台数は中国が世界一

 国際ロボット連盟(IFR:International Federation of Robotics)の年次報告書『World Robotics 2025』では、製造業向けロボットのトレンドとして「人型ロボットの活用」が第2位に挙がる。人型ロボットの製造では中国が世界一で、全世界の出荷台数の84.7%に当たる1万4400台を出荷した(中国税関総署)。

 人型ロボットの開発競争が激しさを増す中で、産業用ロボットの利用も急増している。『World Robotics 2025』によれば、世界の産業用ロボットの新規導入台数は2024年に54万2000台。うち中国の新規導入台数は29万5000台で、全体の54%に達した。同年に中国市場での販売台数は、中国メーカーが初めて外資系メーカーのそれを上回った。

 高性能・高精度などが求められる高付加価値市場では、スイスABB(ソフトバンクが買収)やファナック、安川電機、独KUKAなど、日欧のメーカーが強い。これに対し中国メーカーは中・低価格帯に強く、一部の高機能分野に進出し始めている。ユーザー層も、自動車、電気・電子、金属機械に加え、食品、化学、物流関連分野などに広がり、一般産業向けの需要が成長をけん引している。中国メーカーは価格競争力だけでなく、製品/サービスでも競争力を高めているわけだ。

 輸出も伸びている。中国の産業用ロボットの輸出は2025年に前年比48.7%増えた。輸入を上回り、産業用ロボットの“純輸出国”になった。こうした変化は、中国のロボット産業が、導入や組み立ての段階から、技術/サービスの向上を含む産業基盤へと進化していると言える。

AIの進展がロボットを急速に発展させている

 ロボットの急速な進歩にはAI(人工知能)技術の進化が大きく貢献している。AI技術の搭載によりロボット開発は加速している。AI技術を応用したロボットや、自動運転車、ドローン、物流機器などは「Physical AI(フィジカルAI)」と呼ぶ。

 フィジカルAIの中核技術の1つがEmbodied AIだ。生成AI技術はデジタル空間でテキストや画像を生成する。一方でEmbodied AIは、名前の通り、体(ボディ)を持つAIシステムとして、ロボットのように現実世界で行動する。フィジカルAIが自動運転車や人型ロボットなどに実装された形を示すのに対し、Embodied AIは、それを実現する体を持ったAIの体系である。

 体を持つAIとしてフィジカルAIに搭載され、視覚を持つとともに、アクチュエーターによる動作・行動が可能になる。環境と相互作用を持つ動作ができ、それに関する学習やシミュレーションを実行できる。

 Embodied AIの実装には、VLA(Vision Language Action)モデルが使われる。視覚、言語、行動の3つの点からの情報を統合的に処理するマルチモーダルモデルだ。3つの要素を単一のニューラルネットワークで処理し、3つの要素を統合することで、自然言語による指示に対し、ロボットが環境を視覚で認識し、適切な判断を下す。

 既存のロボットは、エンジニアがプログラムによって判断や動作を教える必要があり時間がかかる。VLAモデルを活用すれば、言葉による指示で新しいタスクを学習させることが可能になり、ロボットの汎用性や開発の高速化が実現した。経験のないことに対しても、これまでの経験の応用で対処できる可能性もある。Embodied AIができることは増え、活用分野は広がる。