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英国で進化を遂げるデータの利活用、最高データ責任者の役割とは【第8回】

鍋島 勢理(CDO Club Japan 理事、広報官、海外事業ディレクター)
2018年5月7日

CDO Club Globalが2018年3月28日、「CDO Summit London」を開催した。英国では3度目となる今回は、英国の企業や行政組織のCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者/Chief Data officer:最高データ責任者)など約60人が一堂に会した。同サミットでの各氏へのインタビューから、特に日本では、ほとんど見られない「最高データ責任者」について考えてみたい。

 「CDO Summit London」に出席したのは、グローバル企業のCDOのほか、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)やCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)など約60人である(写真1)。

写真1:CDO Summit Londonの様子

 彼らの所属先は、Hotels.com、Lloyds Banking Group、Southern Waterといった英国企業のほか、ノルウェーTelenor、ベルギーのEuroclear、伊Sapio Group、米BlueLine Rental、米Microsoft、加Newmedia360などの英国支社、およびNHS DigitalやTransport for Londonなどの公共機関だ。

デジタル責任者とデータ責任者の別に「CDO of The Year」を選出

 本Summitでも注目を集めたのは、その年に最も活躍したCDOを表彰する「CDO of the Year」である。CDO Clubは2013年から、CDO Summitにおいて地域ごとに「CDO of The Year」を発表している。ちなみに日本では、2018年1月に日本ロレアルのCDOである長瀬 次英 氏が「Japan CDO of The Year 2017」に選ばれている。

 London Summitは、Chief Digital OfficerとChief Data Officerを明確に分けて、それぞれのCDO of The Yearが選ばれた。英国ではChief Data Officerを置いて、データの収集や、収集したデータを使いやすい形にするかを整備・推進している組織が多いためである。

 まずChief Digital Officerとして選ばれたのは、NHS(National Health Service:国民健康保険)DigitalのCEOであるSarah Wilkinson氏だ。NHSは英国政府が運営する国民保険サービス。NHS Digitalは英国保健省の主要機関として、健康や社会的介護に必要な情報やデータやITシステムを提供している。

 Wilkinson氏は、そのキャリアを金融業界でスタートさせた。CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)などを務めながら23年間勤務した後、ビザや移民、テロ対策などを管轄する英国内務省に転じた。そこでは、CIOとしてChief Digital OfficerやChief Data OfficerあるいはChief Technology Officerとしての役割を担い、2017年にNHS DigitalのCEOに就いた。

 NHS Digitalは、国民の膨大な個人情報を管理している。Wilkinson氏は、国民保険サービスにおける複雑な手続きを簡素化するためのテクノロジーを導入したり、保険や医療制度などの情報を分かりやすい形で届けるためのプラットホームを見直したりに取り組んでいる。ほかにも、インペリアルカレッジのコンピューティング学部やオックスフォード大学の数学学部の諮問委員会のほか、多くのスタートアップのアドバイザーなども務める。