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米NY発、デジタルトランスフォーメーションに必要な3要素とは【第9回】

鍋島 勢理(CDO Club Japan 理事、広報官、海外事業ディレクター)
2018年6月4日

3つの要素でデジタルカルチャーを醸成

 では、デジタルカルチャーの醸成に向けては何が必要なのか?この問に、世界的なプライベート・エクイティファンドである米ベインキャピタルでオペレーティングパートナーを務めるDarren Herman氏が、今回のサミットのオープニングキーノートで、3つの要素を示した。

 第1は「エクスペリメンテーション(実験)」だ。デジタル化など新たな試みには失敗は付きものである。いわゆる“Fail Fast”の姿勢で、失敗から学び次の試みに生かすプロセスが必要不可欠である。

 日本では“失敗”は、昇進や社内の人間関係にマイナスの影響を与えるイメージが強い。そうである限り、新しいことへの挑戦は恐怖であり続けるだろう。こうした文化を打開するにはやはり、CEOが率先して意識改革に取り組み、カルチャーを変えることの必要性について、他の役員を説得する必要があろう。

 第2は「トランスペアレンシー(透明性)」である。現場の従業員が「必要な情報やデータにアクセスでき、透明性が担保されている状態が、組織のカルチャーに大きな影響を及ぼす」(Herman氏)からだ。

 そしてHerman氏が最後に挙げたのが、「メリトクラシー」である。これは、メリット(業績)とクラシー(統治)を組み合わせた造語で、個々人の能力を重視して人材を配置するという意味である。

 すなわち、年齢や役職、あるいは社内外にこだわることなく、組織が必要とする能力を持つ人材を適切に配置するとともに、業績を高められる人事を評価することである。デジタル化に本腰を入れて取り組んでいる組織においては特に、年齢という区分けは、ほとんど意味がなくなっていると言えそうだ。

ブロックチェーンや量子コンピューターを牽引する若きリーダー

 それを証明するのが、今回のCDO Summit NYCに登壇した16歳と22歳の講演者である。まず16歳の講演者は、カナダのトロントから参加したAnanya Chadha氏(写真3)。「未来のブロックチェーン」をテーマに講演した。

写真3:15歳で2つの仮想通貨を開発したAnanya Chadha氏と筆者

 Chadha氏は15歳の時に、ブロックチェーンのオープンソースソフトウェア(OSS)である「Ethereum(イーサリアム)」を使って2つの仮想通貨を開発したほか、ブロックチェーンに遺伝子データを応用することで、仮想通貨のハッカソンでも入賞した。「世界最年少のBrain-Computer Interface(BCI)開発者」とも呼ばれ、米マイクロソフトがスポンサーにもなっている。

 一方、22歳の講演者は、2018年5月に米ハーバード大学を卒業したばかりのJessica Pointing氏である。「量子の世界」と題して、その応用におけるポテンシャルが未知数の量子コンピューターについて、Summitの参加者に分かるように説明した。

写真4:量子コンピューターの研究を極めるとするJessica Pointing氏

 Pointing氏は、米Googleでソフトウェアエンジニアとして、また米McKinsey & Companyではコンサルタントとしてインターンを経験。それ以前にも、米Goldman Sachsや米Morgan Stanleyといった金融機関でもインターンを経験してる。2018年9月からは米スタンフォード大学の博士として、量子コンピューターの研究を極めていくという。