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CDOパネルで明かされたCDOの本音とは?【第16回】

鍋島 勢理(CDO Club Japan 理事、海外事業局長、広報官)
2019年1月7日

CDO Club Japanは2018年12月5日、東京・飯田橋で「CDO Summit Tokyo 2018 Winter」を開催した。大手企業の経営層から、デジタル推進部門や事業部の部長クラスを中心に200人強が参加するなど、CDO(Chief Digital Officer/Chief Data Officer)の役割への関心の高さをうかがわせた。今回は、同Summitで開かれたCDOによるパネルディスカッションの要点を紹介する。

 2018年にCDO Summit Tokyoが開かれるのは今回で3回目。海外ではニューヨークやボストン、ロンドン、シドニーなど各都市において年1回開催されている。日本は保守的で組織構造がサイロ化していたり、デジタルディスラプター(破壊者)への危機意識が薄かったりすることを懸念してのことだ。実際、CDO(Chief Digital Officer/Chief Data Officer)の数は、海外に比べ圧倒的に少ない。

 今回のSummitでは、「デジタル時代のビジネスの変化とCDOの役割」をテーマに、CDOによるパネルディスカッションを開いた(写真1)。

写真1:CDOによるパネルディスカッションの様子

 パネリストは、三菱ケミカルホールディングス 執行役員 先端技術・事業開発室CDOの岩野 和生 氏、SOMPOホールディングス グループCDO常務執行役員の楢崎 浩一 氏、LDH Japan執行役員CDOの長瀬 次英 氏、SansanのSansan事業部事業戦略統括室室長である柿崎 充 氏。長瀬氏は2018年7月末まで日本ロレアルのCDOであり、「CDO of the Year 2017」でもある。モデレータをCDO Club Japan代表理事の加茂 純 氏が務めた。

デジタル化を牽引するCDOは、まだまだ足りない

――CDOとして最近は、どのように感じながら活動されていますか。

岩野氏 CDOになって1年半ほどが経過し、会社全体として取り組んでいけるといった感覚が得られるようになってきた。ただ、この1年間は、ある意味好奇心だけで乗り切れたが、次第にデジタル変革の成果も求められるようになってきている。

三菱ケミカルホールディングスの岩野 和生CDO

楢崎氏 楽しくやりがいを日々感じている。しかし、デジタル改革は簡単に進められるものではないと同時に、成果も求められるなど、これまでの“ふわふわ”した話から次第にベクトルが明確になってきている。

 その意味で、CDO同士、会社や業界が違っても、その苦悩や施策などで分かり合えることが多く、また刺激を受け、「頑張ろう」という気持ちになれる。

長瀬氏 LDH Japanでは、教育から飲食、ファッション、物販、ライブまで、これまでより広範な業界に関わることができ、発見も多く楽しい環境にいる。ただ、いずれの業界にもCDOは少ない。各業界のロールモデルになるようなCDOが必要だと感じる。

 グローバルでは新たな潮流になっている「シェアリングCDO」や「オンデマンドCDO」などCDOが組織から組織を移りながら活躍するといった形が日本にも広がり、知見が共有されていくのかもしれない。

柿崎氏 海外のCDO Summitでは登壇者の半分が女性だ。参加者も、大企業だけではく中小企業のCDOや、ディスラプターであるスタートアップ企業、10代の天才プログラマーなど、幅広いバックグラウンドを持つ人々が一堂に会し情報を交換している。このパネルの登壇者は全員男性で、参加者もほとんどが男性である状況を課題としてとらえ、CDO Club Japanとしてのメッセージングも変える必要である。

そのイノベーションは“持続的”か“破壊的”か

――各社、デジタルトランスフォーメーションをどのように進めていますか。

楢崎氏 金融機関は“風前の灯”で保険業界も変化しなければならない。イノベーションには、換骨奪胎で古いものを新品に取り替える“持続的”イノベーションと、既存の仕組みを否定し新しいものを創出していく“破壊的”イノベーションの2軸しかない。私自身は、後者のイノベーションを起こすためのCDOだ。

 さらに言えば、フロントラインにあって新事業を立ち上げ、会社や社会に貢献していきたい。それはCDOではなく「デジタル事業オーナー」と呼ぶべきかもしれない。

SOMPOホールディングスの楢崎 浩一 CDO

柿崎氏 私が社外に対して会社のビジョンや、できることをどんどん発信していくのは、変革を進めざるを得ない状況にするためだ。情報発信は会社のカルチャーを変えるために重要だ。