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- CDO CLUB発 世界のCDOは何を考え、どう行動しているのか
増えるCDO、肩書は多様でも不可欠な権限は明白【第18回】
三菱ケミカルホールディングスの岩野 氏の受賞理由は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を含む最新・先端技術の探索および、それら技術の活用、外部機関との連携による事業競争力の強化、新規事業の創出に向けた活動が社会的に認知されていることなどが挙げられた。
なかでも、デジタル技術の適応例を13パターンに分類した「Digital PlayBook」を、デジタル専任組織であるデジタルトランスフォーメーショングループが2018年9月にまとめ上げたことが話題になっている。
SOMPOホールディングスの楢崎 氏の場合は、2016年5月という国内では早い段階からCDOとしてデジタルトランスフォーメーションに従事してきたこと、同社がイスラエルのテルアビブに構えるデジタルラボを拠点に、CDO Club Japanの海外での活動への連携といった貢献などが挙げられる。
同氏の取り組みとしては、2018年1 月に発売したドライブレコーダー付き自動車保険商品など、旧来のビジネスモデルを破壊・再定義していることなどが知られている。
ちなみにJapan CDO of the Yearの選考にあたっては、選考委員会が設置され、CDOとしての実績や、その活動の社会的認知度、活動および役割の認知度、普及への貢献といった項目によって審議される。ちなみに、Japan CDO of the Year 2018の選考委員は以下であった(順不同)。
神岡 太郎 氏(一橋大学商学研究科 教授/CDO Club Japan顧問)
鶴岡 弘之 氏(日本ビジネスプレス『JBpress』編集長)
志度 昌宏 氏(インプレス『DIGITAL X(デジタルクロス)』編集長)
加茂 純 氏(CDO Club Japan 代表理事)
水上 晃 氏(CDO Club Japan理事、事務総長)
危機感の強い経営層がCDOの選任に動く
CDOという新しい役職については、デジタル変革やデータ利活用といった潮流に対応するために、危機感の強い経営層が率いる大手企業を中心に、国内でも選任する動きが高まっている。日本におけるCDOの数が増える潮流は喜ばしいことだ。
一方で「とりあえずCDOという役職を設ける」というケースも見られることを懸念している。企業によっては、役員の立場でなく、「デジタル推進部長」「イノベーション推進部門長」などの形を採る場合もある。
確かに「CDO」というタイトルは必須でもないかもしれない。組織の規模や業種、各社の歴史やカルチャーにもよるだろう。ただ重要なことは、組織においてデジタルトランスフォーメーションをリードしていく役割を担う人材には、経営者との距離が近く、決定権を持ち、全社横断で物事を進められるだけの立場と権限が与えられることが必要条件である。
CDOが増える中で、2019年のJapan CDO of the Yearは、どのCDOの頭上に輝くのであろうか?
鍋島 勢理(なべしま・せり)
CDO Club Japan理事、海外事業局長、広報官。2015年青山学院大学卒業後、英国ロンドン大学 University College London大学院にて地政学、エネルギー政策を学ぶ。東京電力ホールディングスに入社し、国際室にて都市計画、欧州の電力事情等の分析調査を担当。外資コンサルティングファーム勤務を経て、鍋島戦略研究所を設立。デジタル戦略をリードする国内外の人やデジタルテクノロジーを取材し、テレビや記事、講演などで紹介している。海外のビジネススクールと連携したデジタル人材教育プログラムを開発中である。オスカープロモーション所属。