• Column
  • CDO CLUB発 世界のCDOは何を考え、どう行動しているのか

「Japan2.0最適化社会」を提言する経済同友会が抱く強烈な危機感【第20回】

鍋島 勢理(CDO Club Japan 理事、海外事業局長、広報官)
2019年5月7日

経済同友会が2018年12月、「Japan2.0 最適化社会の設計―モノからコト、そしてココロへ―」という提言を出した。その集大成として『危機感なき茹でガエル日本―過去の延長線上に未来はない』(2019年3月、小林 喜光 氏監修、経済同友会著、中央公論新社)を発行し、「適正な競争と公正な分配のある社会」である「Japan2.0最適化社会」を目指すことの重要性を述べている。その裏側には、デジタル化時代に対する強烈な危機感がある。

 「Japan2.0 最適化社会の設計―モノからコト、そしてココロへ―」という提言をまとめた経済同友会の代表幹事は小林 喜光 氏である。2019年4月末で代表幹事を降りる前の小林氏を、CDO Club Japanの理事たちで過日、訪問した(写真1)。

写真1:経済同友会の前代表幹事である小林 喜光 氏(右から2番目)と、CDO Club Japanの理事たち

 大企業を束ねる経済同友会のトップとして大局的な視点を持つ小林氏は筆者たちに、グローバル化、デジタル化、ソーシャル化という3つの大きなうねりの中で日本が直面している危機と、人類がかつて経験したことがない大変革の時代に私たちが何をすべきかを語ってくれた。

デジタル・ディクテーターシップの時代がやってくる

 Japan2.0を目指すうえで大切なのが「持続可能性」の観点であり、私たちが直面している社会課題を解決に導くトリガーとしての「ノベーション」の存在だ。そして小林氏は、「イノベーションを生み出すために必要なものが“データ”である」と語る。

 土地やゴールドに代わり、データの所有こそが権力の源泉となる「デジタル・ディクテーターシップ」の時代が到来しようとしている。CDO Club Japanが主催するCDO招待制会議でも毎回、大きな議題に挙がるのが新しい事業のためのデータの取得方法だ。

 たとえば、日本ロレアルやサンリオエンターテイメントなどでは、業績向上のために、より顧客に近づくためのデータ活用が不可欠になっている。顧客の反応がリアルタイムにわかることで、マーケティングやプロモーションの施策をアジャイル(俊敏)に進められるからだ。

 電力会社でも、電力データと異業種のデータを掛け合わせて分析することで、社会課題の解決や新たなビジネス価値の創出につながっている。まさにデータはイノベーション創出のカギになっている。

 並行して、サービスやアプリケーションがクラウド環境に移行していくことで、予算の多くを割かざるを得なかったレガシーシステムやデータセンターのメンテナンスコストがイノベーションの創出へと振り替えられている。