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エストニアがデジタルガバメントへの改革に成功した理由とは?【第21回】
デジタルガバメントの先進国エストニアの首都タリンで2019年5月、同国最大のスタートアップイベント「Latitude59」が開催された。Latitude59に合わせてエストニアの行政サービスの変遷を学べる「e-Estonia Briefing Centre」なども訪問した。そこから、日本がエストニアに学ぶべきポイントを考えてみた。
エストニアのスタートアップ企業が集うイベント「Latitude59」が、首都タリンで2019年5月16と17日の2日にわたり開催された。同国を代表するユニコーン企業である無料通話サービスのskype(現在の本社は米国)や、P2P送金のTransferwise(同英国)、配車サービスのtaxifに加え、事業拡大を狙うスタートアップ企業や投資家、スタートアップのエコシステムを支援する企業などから、およそ2500人が参加した。
日本の大手企業や自治体からの参加者の姿も多数見られた。福岡市長がスピーチしたサイドイベントでは、福岡市やエストニアのスタートアップ企業がピッチコンテストに参加した。同会場には、入り切らないほどの人が集まった。
さらに今回は、エストニア初の女性大統領であるKersti Kaljulaid(ケルスティ・カリユライド)氏がパネリストなどに登壇し、国としてデジタル化を推し進めていくという強い意思を示した(写真2)。国民との距離を縮め「より良い国作りや生活を共に目指そう」というメッセージングが見てとれる。
行政手続きの99%がオンラインで完了
エストニア市内には、同国における行政サービスの電子化の変遷を学べる施設として「e-Estonia Briefing Centre」が開設されている(写真3)。電子投票やe国民といった制度が日本では良く報告されているが、それ以外の行政サービスのいくつかを紹介する。
たとえばエストニアの引越しでは、ポータルサイトから新しい住所を一度入力すれば、ガスや電気のほか、住所を登録している先のすべてで住所が自動で更新される。日本での引越しのように、関連会社のそれぞれに電話をしたり、書面で更新したりと、引越しに伴う作業に時間を費やすことはない。
子供が産まれれば、10分後には政府から子供の個人IDと共に、お祝いのメッセージが届く。病院が国民登録の手続きをオンラインで実施しているからだ。退院後に保護者が役所を訪れ、書面で出生届などを出す必要はない。
処方箋も電子化されている。医師はポータルサイトから、患者の血液型やアレルギー情報、通院履歴や薬の処方箋情報などを確認できる。診察に初めて訪れた病院にも患者の情報が引き継がれる。エストニアの住民からは「大変便利なシステムだ」との声を聞いた。
このようにエストニアでは、行政手続きの99%がオンラインで済ませられ、税関連書類の95%が電子化されている。一連のサービスを可能にしているのが国民IDの存在だ。電子IDカードは、身分証明はもちろん、健康保険証や運転免許証としても機能する。
日本のマイナンバー制度は、エストニアのノウハウをかなり参考にしたとされる。だが、その普及率は約10%である。この差を生み出している違いにこそ、エストニアに学ぶべきポイントがある。