- Column
- 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法
データを“金”に変えるにはメッセージが不可欠である【第17回】
「お金儲け」はデータ分析と経営の境界線?!
データをビジネス、すなわちお金につなげるためには、消費者のデータを大量に取得できている企業であっても、単なるデータから“新たな気付き”を得ることは、そう簡単ではなく不断の努力がいる。データを分析しても、当たり前の結果が出ることも少なくない。そこに「お金を儲ける」という側面を加味すれば、データ分析によって成果を得るためのハードルは一層高くなる。そこがデータ分析と経営の境界線なのかもしれない。
特に、外部の立場でデータを集める場合、留意しなければならないことがある。「必要とするデータのすべては取得できない」ということだ。
たとえば、自動車部品を作っている部品メーカーの商流を調べたい場合、どこに部品を売っているのかは、そのメーカーを起点にすれば、バイヤーの情報は外部の者でもネットで比較的簡単にデータを取得できる。ところが、下位部品をどこから買っているのかのデータを外部の者が得るのは難しい。下位部品の数が多いことなどから、サプライヤーに関するデータの取得は、バイヤーについてよりも難易度が高くなる。
もちろん調査会社などからTrusted Dataを購入すれば概算値は分かる。モノの流れの逆はカネの流れなので、精度をより高めるには、カネの流れを見ることでモノの流れが明確になってくる。ただ、この方法は送金データを持っている金融機関しか扱えない。制限がある環境下では、得られたデータからベイズ推定などで推論し、スパースモデリングなどでデータを創造していく必要もある。
では、すべてのデータが取得できない中で、どうビジネス化を図るのか。ここで有効なのが「データの重力」である。ビジネスもデータの方向に引きずられていく。データを押さえ、適切なアルゴリズムを考え、ビジネスモデルを構築すれば良い。
X-Techの登場はデータ駆動型時代の象徴
当然、従来のやり方だけで対応するのは難しい。既存企業なら自らが持つAlternative Dataも分析しながら、新しい発想を持って既存のビジネスモデルに組み込む。新規企業であれば、新しいデータを取り込んだ新しいビジネスモデルを設計しなければならない。その際のキーワードが「X-Tech」である。
2000年に「xSP(x Service Provider)」が流行した。「x」にはアルファベットが入り、「ISP(Internet Service Provider)」「ASP(Application Service Provider)」「MSP(Management Service Provider)」など、多くのネット事業者が誕生した。
それに続いたのが「XaaS(X as a Service)」である。同じようにXにアルファベットが入り「SaaS(Service as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「IaaS(Infrastructure as a Service)」「MaaS(Management as a Service)」などクラウド事業者が登場した。これらxSP、XaaSに続き、データに着目したビジネスモデルがX-Tchだ(図2)。
コンピューターは、(1)ビジネスモデル、(2)アプリケーション、(3)ITインフラストラクチャー、(4)データから成り立っている(第1回参照)。xSPは、(3)ITインフラストラクチャーに焦点を当てたビジネスモデル、XaaSの成功の可否は(2)アプリケーションにかかっている。そして、X-Techは(4)データをどう活かすかにかかっている。
X-Techに向けては、どの業界もデータ活用に躍起になっている(表1)。その中で最も知られるのは「FinTech(Financial Technology)」だろう。日本では規制や法律を気にかけるので「LegalTech」や「RegTech(Regulation Technology)」に目が行っている。FinTech以外のX-Techが浮上するかどうかは、ITテクノロジーを駆使しデータを使いこなせるかどうかにかかっている。
X-Tech | 対象業種・業務 |
---|---|
Ad Tech | 広告 |
Agri-tech | 農業 |
Edu-tech | 教育 |
Fintech | 金融 |
Food Tech | 飲食・調理 |
Gov Tech | 官公庁 |
HR Tech | 人事 |
InsurTech | 保険 |
Legal Tech | 法律 |
Real Estate Tech | 不動産 |
Reg Tech | 規制 |