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  • 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法

データ分析に不可欠な発想力は日々の行動で磨ける【第18回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年2月25日

 筆者はこれまで、クラウドコンピューティングやビッグデータ、GRC(ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス)のコンサルタントあるいはエバンジェリスト的な立ち場で活動してきた。だが、クラウドもビッグデータもGRCも自ら志願して担当したわけではない。社内に適切な担当者がいないという安易な理由で回ってきただけだ。

違和感を記録し「アイデアの辞書」を作る

 当然ながら「今日からクラウドのエバンジェリストだ」と、いきなり言われても、何のスキルもなく、アイデアなどが出るはずもない。そこで筆者が実施したのは、「Cloud Computing」というキーワードについて毎日、メディアで見た内容や、プレゼンした際の違和感つまり説明が難しかった点、聞いた人の反応をExcelシートに書いて記録することだった。

 すると、いつの間にかCloud Computingだけで50近い索引と内容がExcelシートで3800行にもなっていた。クラウドが、さまざまな分野に波及した今では、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などIT関係の話題だけでなく、心理学や、経済学、営業力、リスク管理、自動車部品、グローバル化、政治、ヘルスケアなど40カテゴリー以上にもなっている。

 約40のカテゴリーのそれぞれに約30~50のインデックスがあるため、2000近い索引があるわけだ。これをExcelファイル、スキャンしたPDFファイル、アナログ情報などで管理している。これが「アイデアの辞書」だ。その内容を紐付ければ無限に近いアイデアが出てくる(図2)。

図2:日々のデータを整理し「アイデアの辞書」を作れば、そこから新しいアイデアが導き出せる

 読者がこれから取り組むなら最初は、3カテゴリー程度で始めることをお勧めしたい。アイデアの辞書を予め用意しておいて、ケースごとに紐付けていく。実際のデータ分析の際にも、生データをモデリングによって情報にし、情報の塊を作っていく。この塊がアイデアの辞書だ。そのうえで複数の辞書を紐付けていけば良い。

 加えて、なんの関係もない情報の塊を持ってくるセンスが大切だ。それも、どの程度、辞書を知っているかに依存してくる。それだけに、日々のデータ集めやオリジナルの辞書作りが欠かせない。これを「辞書化する力」と呼んでいる。当然ながら、ファクトチェック(検証行為)も必要で、信頼性の高い辞書にしなければならない。

 考えてみれば、価値ある分析は離れたデータ群を紐付けることが肝である。いくつものアイデアの辞書化が必要なのは自明なのである。

 そういえば複式簿記では、取引をその二面性に着眼して記録し、貸借平均の原理に基づいて記録・計算・整理する。その際も仕訳帳と経費帳・未払金帳・現金元帳・売掛金元帳などを紐付けて管理している。この紐付ける習慣が不正の検出に役立つ。「紐付ける力」は、アイデア出しだけでなく様々な局面で使える。

 参考までであるが、帰国子女でもなく外国に長く住んだこともない筆者は、外資系企業で英語を使ってきた。そこでも自分専用の英語表現の辞書を用意していた。やさしい英会話の本を1冊購入し、そこに失敗経験から得られたことを書き加え続けた。1996年に買った、その本には、20年以上の書き込みがあり、今も現役である。

 すべてのことがDIKW(Data、Information、Knowledge、Wisdom)の流れに沿っている。本連載で繰り返し指摘しているように、単なるデータ(Data)が、情報(Information)になり、辞書化し紐付けることで知識(Knowledge)になり、実践で使えば知恵(Wisdom)になる。