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データ分析に不可欠な発想力は日々の行動で磨ける【第18回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年2月25日

グループのアイデア出しに有効な「ブレインライティング(Brain Writing)」

 グループでアイデアを創出する場合に有効なのが、アイデアを書き出す「ブレインライティング(Brain Writing)」である。

 グループでのアイデア出しといえば一般に、ブレインストーミング(Brain Storming)が実施される。だがブレストでは、声が大きい人、役職が上の人の意見が通りやすいことに加え、言い放して終わるケースがほとんどだ。ブレインライティングなら、全員が同じ立場で、同じ機会をもって参加できる。

 なお、ブレストは細部にこだわると失敗する。なので、ホワイトボードなどにアイデアを書き出すなら太いペンを使ったほうが良い。太いペンだと、細かい点が書けず、大局的なことだけが残る。その絞られた大きな議題に対し、ブレインライティングでアイデアを付けていく。木で言えば、ブレストで幹を描き、そこに枝葉を付けていくイメージだ。

 筆者が、ファシリテーターとしてアイデア出しのセッションを担当する際は、ブレインライティングをカスタマイズしたアイデア創出法を活用している(図3)。

図3:グループによるアイデア創出の手順

 ライティングであるから書き出すのが基本である。大きなサイズの付箋紙を、実施回数分の色違いで用意し、参加者にアイデアを書いてもらう。短時間で効率よくセッションを進められるのが魅力だ。多くは、「重要度」「緊急度」「実現可能性」の3つの基準でアイデアを評価するが、ここに「発想力」を加えることが大切である。

自身のアイデアだけでなく人のアイデアを膨らませる

 アイデア出しのセッションで重要なことは、人のアイデアをどう膨らませていくかだ。つまり、最初のアイデアに対し「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「置換」「逆転」「結合」を図る。これがアイデア出しフレームワークで有名な「オズボーンのチェックリスト」だ。さらに「強調」「除去」「並び替え」「類似性の発見」「展開」を図る。既成の思考から離れ、さまざまな角度から縦横斜め自由にアイデアを巡らせる。

 よく「アナロジー思考」「マトリクス思考」「水平思考」などと言われるが、要は「抽象化する思考力」を養うことである。とかく日本人は、グローバルな環境で、この抽象化が苦手と言われている。これを克服するためにも科学的な手法で発想力を活かしたデータ分析を心掛けたい。

 筆者自身、自動車部品や国家予算など複数の分析プロジェクトにおいて要件を洗い出す際に、ブレインライティングを用いている。新たな領域を創造していく場合、なかなか明確な要件がない。何のデータを使って、何を知り、どうビジネス化していくかなどの意向がない場合は、アイデア出しセッションで対応するのである。

 これにより分析だけでも、相関分析、回帰分析、可視化、需要予測、競合分析など利用者目線のアイデアが短時間でいくつも出てくる。データサイエンティストが独断で決めるのではなく、先方のキーパーソンとも合意が取れるので、とても効率的な方法である。