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分析の『5大アセット』が専門家にも負けない知見を生み出す【第24回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年8月26日

ヒト・モノ・カネに情報を加えた4つが近年の経営資源だとされている。データ分析の世界では「ヒト・モノ・カネ・ブランド・データ」の5つが重要な資源になる。これを筆者は『5大アセット』と呼んでいる。今回は、この5大アセットについて解説する。

 分析における『5大アセット(資産)』とは、ヒト・モノ・カネに関するデータと、企業情報を含むブランドに関するデータ、そして、これらを組み合わせたデータ、あるいは表立っては現れない、さまざまなデータのことである(図1)。

図1:分析における『5大アセット(資産)』

 なぜ、これらが分析の5大アセットなのか。たとえばシェアリングエコノミーを考えてみよう(図2)。「Airbnb」「Uber」「WeWork」などのサービスが代表例だ。

図2:シェアリングエコノミーに見る5大アセット

 シェアリングエコノミーは、何かしらのアセットを共有するビジネスモデルである。ヒトについては家の掃除や雑用などスキルを共有する。モノやサービスは、配車アプリによる自動車のシェアが有名だ。カネはクラウドファンディング、ブランドは有名なネット上のショッピングモールに入ることが当てはまるであろう。

 そしてデータはシェアリングエコノミーの副産物ではあるが、すでにUberでは「アルゴリズムが上司」と言われているようにデジタルデータが重要な資産になっている。さらにシェアリングエコノミーでは、これら5大アセットのみでなく、時間・言語・空間・文化も共有しており、広義にはこれらもアセットの一部だと言える。

 こうした価値を念頭に、5大アセットの1つひとつを見ていこう。

5大アセット1:ヒトに関するデータ

 人の属性、他の人との関係性、能力やスキルによる評価などが企業内に存在するヒトに関するデータの基本になる。主に人事部門が管理しているデータだ。社外に目を向ければ、B2C(企業対個人)ビジネスにおける顧客属性データも当然ながら同分野のデータになる。

 人の属性には構造化データと非構造化データがある。出身大学や、出身地、資格、ビジネス経歴などが構造化データ。入社時に書いたコメントや日々の営業日報などが非構造化データである。同じ大学を出た、あるいは、同じ出身地といったことを契機に他の人との関係性が生まれるように構造化データにも価値がある。

 非構造化データの価値の例には、筆者が実施した人材コンサルティングにおける形態素解析の方法がある(第10回で紹介)。人の行動や感情を表すデータを使って社員の退職者傾向を分析したものだ。営業日報などからは、会社でパフォーマンスが高い社員や、影響力のある人の傾向が分析できる。採用面接において候補者が選んだ回答の因子分析も即効性がある(第5回参照)。

 実は、男女の相性もクラスター分析により最適な組み合わせを比較的容易に調べられるが、詳細は別の回に譲ろう。いずれにおいても個人的なことを分析する場合は、ライフイベントや行動特性などが大切になる。

 人に関するデータは、構造化/非構造化データのほか、エモーション(感情)やマインド(潜在意識)へと増大するばかりであるが、いずれもデータ分析の主要項目であることは間違いない。

政府が用意するデータ

 人に関して政府が用意する指標には、厚労省の『新規求人数』と『有効求人倍率』がある(図3)。景気の先行きを予測するのに役立つ。

図3:政府が用意している『5大アセット』に関する指標の例