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  • 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法

お金の分析:その1=メタデータしか分析できない投資信託は投資ではない?!【第25回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年9月30日

ビジネスにおける分析対象は、「ヒト・モノ・カネ・ブランド・データ」の5大アセットだ(第24回参照)。これらは私生活でも大きな意味を持つ。なかでもカネ(お金)への関心は高いだろう。今回から、この“お金”の分析について筆者の経験を交えながら3回に分けて説明していく。膨大なデータを分析すれば専門家にも負けないどころか、むしろ、しがらみがなく利害関係を考慮しない分、忖度のない中立的な判断ができるようになる。

 「お金」は確かに大切で「〇〇〇万円を貯める」ことを目標にする人も多い。しかし、目標額に近づいてくれば、新たな目的が浮かんでくることだろう。海外旅行や住宅購入、海外留学などなどだ。つまり、お金は本来、目的達成のための手段であり、手段であるお金に苦労するのではなく、お金を上手に「増やす・使う・節約する」ことを学び、次の目標に重点を置くべきであることを忘れてはならない。

 そのためにも、データ分析という能力は、誰もが備えておくべきだ。データ分析のシーンは大きく3つに分けられる。1つは、分析対象が異業種の分野で自身にノウハウがない場合で、その時は本物の専門家と協業する。分析において専門家の意見は重要だ。筆者が自動車部品について分析した際は、同分野の専門家と協業した。

 次のシーンは全く新しい分野での分析だ。そこには専門家がいないので、自らが専門家にならなければならない。かつてオープンデータを元に国家予算について分析した際は、専門家がいなかったため、自ら分析しながら対応した。

 最後のシーンが、日常生活でもビジネスでも自ら分析しなければならないケースである。このケースで読者が自らデータを分析できるように、個人レベルの投資を題材に筆者が得たノウハウを共有していきたい。

情報に頼るのではなく、そこに至る考え方や分析方法が大切

 筆者は20代のころから30年以上あらゆる投資を行ってきた。株式、投資信託、貴金属(ゴールド、プラチナ)、不動産、外貨などである。あくまでもデータ分析の題材として投資してきた。

 預貯金も同様だ。都市銀行や、信託銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、ゆうちょ銀行、JAバンク、ネット銀行、証券会社など、可能な限り多くの金融機関と取引した。近所の金融機関だけでなく、良い商品/サービスがあれば、遠方であっても取引してきた。

 ほとんどの人にとって、預貯金や投資、保険、年金、投資信託などは、どうすれば良いのか迷う時代になっている。数年前の常識では対応できず、結果、さまざまなデータや意見に右往左往させられる。最新情報をもとに分析しなければ時代に取り残されてしまうのだ。

 たとえば今、筆者が原稿に金融機関や金融商品のランキングを書いたとしても、あくまでも現時点の情報であり、記事が公開された時点ではすでに、その内容が変わってしまっている。鮮度が落ちてしまった情報に頼るのではなく、そこに至る考え方や分析の方法を身に付けてほしい。

 読者の中には、お金や分析が苦手な人もいるだろう。本当にお金が苦手ならば、別稿で説明する「年代別モデル」だけは最低限理解してほしい。分析が不得手な人は結果だけを知りたがるかもしれない。だが、結果から得たノウハウが分かっても実施しなければ全く意味がない。理解したうえで必ず実践してほしい。

投資と金儲けは根本的に異なる

 お金の分析の説明をする前に、言葉の定義をしておく。「貯金」は、郵便局やJAバンクなど公的な要素の強い金融機関に預けるときに使われる。一方「預金」は、それ以外の銀行や信用金庫、信用組合などに預ける時に使われている。両方に当てはまる時は、両者をまとめて「預貯金」とする。

 「貯蓄」は財貨を貯めることで、「投資」や「投機」とは区別して使う。投資は長期的に資金を投じることであり、投機は短期的に変動の差益を狙ったものである。

 似たような言葉に、保険会社が使う「貯蓄性」や「貯蓄型」がある。保険会社には預貯金しないので、それに近い意味で貯蓄性・貯蓄型という言葉を使う。いずれも「掛け捨て」と対比して使われ、万が一のときに備えながら、将来のためのお金を蓄えることを指す。