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お金の分析:解説編=ライフイベントの辞書から年代別モデルを作る【第29回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年12月23日

価値ある商品やサービスには積極的に出費すべき

 自らお金の分析をするのは面倒だし、本連載で説明した具体的な方法が用語を含めて理解が不十分なら、多少お金がかかっても信頼できるコンサルタントに相談するのもありだ。ただし“売る”金融商品が予め決まっている人はコンサルタントでなく単に営業なので、そのことを理解した上で付き合う必要がある。

 お金は手段として使うもので、価値ある商品やサービスには積極的に出費すべきである。だが、無駄で何の役にも立たないものには1円でも使ってはいけない。仕事をしてコツコツ貯め、我慢し節約した大切なお金をブラックボックス化した投資商品や手数料に費やすべきではない。

 農耕民族の遺伝子を持つ日本人はもともと、投資よりも預貯金に向く国民性を持っている。無理やり欧米型のシステムに併せようとしても上手くいくはずがない。老後に必要なお金を投資で儲けようとして失敗するぐらいならば、まだ公営ギャンブルや宝くじのほうがいい。やはり預貯金を地道にやることが一番だ。

 というのも、大地震や、戦争、超異常気象、通貨危機、バブル崩壊など地政学的な危機が起こってからでは取り返しがつかなくなるからだ。これらの危機が日本で起こっていなくても、世界各地で起こった危機がドミノ倒しのように襲ってくる。さまざまな投資や分散投資を正当化するようなデータや記事があっても、その信頼性を疑う時代だ。国の統計すら当てにできないのだから。

データは嘘をつかないが情報には誘導の意図が含まれている

 では、どうすれば良いのか。1つの答えは、やはりデータにある。たとえば第26回で述べたように、貴金属の相場は今後の経済の動きを暗示している。小難しく因果関係しか認めない人もいるが、さまざまな相関関係で示されるデータを読み解くことは、嘘の情報より価値は高い。

 一見、原因Aと結果Bに見えたとしても、よくよく調べるとAとBに相関関係しかないということは相当多い。しかし、本当はAとBの両方に影響を与える第3の要因(第2回で述べた交絡因子)に気付いていないだけかもしれない。謙虚にデータを掘り起こしてほしい。

 データは嘘をつかないが、加工されたデータ、つまり情報は人を誘導する意図を含んでいる。第5回で説明したように、アンケート結果、特に、お金に関する結果には人の嘘が含まれているので、扱いには十分留意したい。

 お金の分析を続けて、40代や30代、20代、あるいは60代のモデルの詳細を説明することもできるが、それは別の機会に譲る。お金だけでなく、他にも、さまざまな対象に分析ノウハウが使えることを知ってほしい。そこで次回は、お金以上に大切で注目度も高い健康管理、つまりヘルスケアに関する分析を“モノ”の視点から説明する。

入江 宏志(いりえ・ひろし)

DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。2017年にデータ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。

ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。