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お金の分析:解説編=ライフイベントの辞書から年代別モデルを作る【第29回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年12月23日

前回は、年代別モデルの代表として50代についてお金に関する分析結果を説明した。今回は、その結果に至った方法論として、ライフイベントの辞書の仕組みと分析方法を解説する。これを理解すれば、読者は、自分の年代に見合った分析が可能になる。なお、すべての分析の元になっている情報は2019年12月時点のものである。

 データ分析には“辞書”が欠かせない(第8回参照)。お金のことを年代別に分析するには、お金に関するライフイベントの辞書を作りたい。ライフイベントの辞書の構築は、フェーズA、B、Cの3段階を踏む(図1)。

図1:ライフイベントの辞書の構築手順

フェーズA:ライフイベント(Keyword)を決定する

 ライフイベントでのキーワードとは、就職、結婚、出産、子育て、住宅取得、転職、副業、早期退職、定年退職、相続などである。

フェーズB:お金について考慮すべき議題(Agenda)を洗い出す

 お金について考慮すべき議題(Agenda)には、以下のようなものがある。預貯金、投資、投資信託、NISA、つみたてNISA、不労収入、雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金、国民年金、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金、中小事業主掛金納付制度、財形貯蓄制度、持ち株会、税金、住宅ローン、保険商品、贈与などだ。

フェーズC:フェーズAとフェーズBの2つに関連するポイントを記入し辞書(Dictionary)を構築する

 フェーズA〜Cを経て、筆者が構築した辞書を簡易化したのが表1である。ライフイベントを“行”に、お金について考慮すべき議題を“列”として関連付けたものだ。ライフイベントとして読者の気になるキーワードを礎に、お金についての議題(Agenda)を結び付けていく。必要に応じてライフイベントの辞書に項目を追加していけば、辞書を強化できる。

表1:お金の分析のための辞書の例
〇:概ね必須、△:オプション、◆:推奨。令和元年12月現在考慮すべき議題(Agenda)預貯金雇用保険健康保険介護保険厚生年金国民年金企業型確定拠出年金(企業型DC)個人型確定拠出年金(iDeCo)中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)拠出型企業年金財形貯蓄制度税金住宅ローン保険商品
ライフイベント(Keyword)世代別(目安)貯蓄社会保険社会保険社会保険公的年金公的年金企業年金個人年金個人年金企業年金福利厚生負債保険
20歳以上の全世代(〇)ーー医療費(〇)40歳以上ーー第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、その家族、学生、無職の人等で、第2号被保険者、第3号被保険者でない者)ーー原則20歳以上60歳未満中小企業(従業員数に制限あり)に勤める20歳以上60歳未満ーーーー(〇)ーーーー
早期退職50代1年満期(◆)、退職金運用プラン(◆)失業手当(△)任意継続または国民健康保険(〇)ーーーー国民年金(第1号被保険者)への加入、扶養の配偶者も国民年金(第1号被保険者)へ加入(〇)iDeCoへ移管(△)企業型DCから移管(△)ーー脱退一時金(△)ーー確定申告(〇)完済が望ましいが、一部繰上げ返済も検討(△)ーー
就職20代毎月積立定期(◆)加入(〇)加入(〇)ーー加入(国民年金第2号被保険者)(〇)ーー勤務先に制度があれば加入(△)企業型DCに入っている人は勤務先が認めれば加入できる(△)事業主が掛金を上乗せ(△)加入(△)家の購入に備えて住宅財形に加入、給与天引き(△)源泉徴収(所得税)(〇)ーー医療保険、個人年金保険(△)
結婚20代、30代、40代1〜5年満期(◆)ーー配偶者(扶養者)(〇)ーー配偶者(国民年金第3号被保険者)(〇)ーーーーーーーーーー家の購入に備えて住宅財形に加入、給与天引き(△)ーーーー終身保険、医療保険(△)
出産20代、30代ーーーー出産育児一時金、子供(扶養者)(〇)ーーーーーーーーーーーーーー家の購入に備えて住宅財形に加入、給与天引き(△)確定申告(医療費控除)(〇)ーー学資保険への加入検討(△)
住宅取得20代、30代、40代ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー住宅財形の場合、低金利の融資と非課税(積立額最大550万円への利息)(△)住宅ローンの場合は確定申告(住宅借入金等特別控除)、リフォームの場合は確定申告(住宅特定改修特別税額控除)(〇)契約(〇)火災保険、地震保険、家財保険、団体信用生命保険(〇)
子育て20代、30代、40代、50代1〜3年満期(◆)ーー子供が就職すれば扶養者から外れる(〇)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー医療保険、学資保険、個人賠償責任保険(△)
転職20代、30代、40代、50代3〜5年満期(◆)失業手当、一般教育訓練給付金、(再就職先での)加入(△)(再就職先での)加入(〇)ーー(〇)ーー転職先に制度があれば移管(△)企業型DCから移管(△)ーー脱退一時金、転職先で加入(△)転職先に制度があれば継続(△)源泉徴収(所得税)(〇)借り換え、または一部繰上げ返済(△)ーー
副業30代、40代、50代ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー確定申告(〇)ーーーー
退職60代年金受給で有利な預金(◆)、退職金運用プラン(◆)高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金(△)任意継続または国民健康保険(〇)介護サービス、高額介護サービス費(△)年金受給(〇)年金受給(〇)一時金または年金で受給(△)受給(△)ーー受給(△)年金財形の場合、年金支払い終了まで非課税措置(積立額最大550万円)(△)確定申告(退職金)(〇)完済が望ましいが、一部繰上げ返済も検討(△)ーー
相続全世代ーーーー埋葬料(〇)ーー死亡の手続き(〇)死亡の手続き(〇)ーーーーーーーーーー該当する場合は相続税(〇)団体信用生命保険に加入していて条件を満たせば住宅ローンの完済(〇)終身保険の死亡保険金(△)