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お金の分析:その2=ベストな金融機関を選べるか【第26回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年10月28日

前回から「お金の分析」をテーマにしている。前回は、投資信託の商品性を分析した。今回は、お金に関して自分に合った最適な方法を見つけるために、預貯金や投資、金儲けなどの分析プロセスを解説したい。なお金利や為替レートなどの情報は2019年10月25日時点の情報を使っている。

 お金に関するデータは途方もなく莫大であり、まさにビッグデータと言える。そのため、第19回第23回で述べた『ビッグデータの法則』が、ことごとく当てはまる。各法則については、これらの回を参照してほしい。

 自分にあった方法を探すには、預貯金・投資・金儲けなど、いずれの視点であっても「分析」が不可欠である。不用意に“一か八か”で取り組んではならない。筆者が提唱する「AUOODA」プロセスが適している(図1、第12回参照)。年齢に関係なく利用できる。

図1:お金の分析プロセスに適する「AUOODA」

 AUOODAとは、(1)整頓(Arrange)、(2)理解(Understand)、(3)監視(Observe)、(4)情勢判断(Orient)、(5)意思決定(Decide)、(6)行動(Act)の6つのプロセスを指す。これをお金に当てはめると次のようになる。

プロセス(1)整頓 :預貯金や投資等に関する情報をこまめに収集する。その際に、期間限定商品、金利等も検討する
プロセス(2)理解 :仕組みを十分に理解し、メリットやデメリットを把握する。投資信託・上場株式などの運用で使える『NISA(少額投資非課税制度)』や『つみたてNISA』のような制度も理解する
プロセス(3)監視 :実際に投資しないで観察する。たとえば『企業型確定拠出年金』に入る際に、検討する時間がないときは事業主掛け金だけで様子をみる
プロセス(4)情勢判断 :どのタイミングで売買するか、どの程度の利益が出たら撤退するかなど自分の最適な形をライフイベントも考慮して決める。お金に関するアルゴリズム(どう解くかという手法、第3回参照)ともいえる
プロセス(5)意思決定 :各資産の売買の時期等を予測・推論する
プロセス(6)行動 :実際に預貯金や投資等を行いながら適宜、商品や割合を変更する

各国の経済・財務指標と株式市場データは最低限理解する

 「 プロセス(1)整頓 」で役立つ基本的なデータが、各国の経済・財務指標と株式市場のデータだ。

 最近の日本の株式市場は、米国のコピーのような動きなのでデータ分析視点では面白くない。そのうえ、年金積立金管理運用(GPIF)のお金、つまり年金の掛け金をもとにした投資と、日銀の資金など併せて60兆円近い資金が入っているとの指摘があり、だから日本の株式市場は活況を呈しているように見えるとの考えもある。

 日本とスイスは以前から、異常に金利が低かった。加えて最近はマイナス金利が増えている。ドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、フランス、ベルギーでも国債10年物の金利がマイナスになっている。

 ただし、1米ドルは0.99スイスフラン、0.90ユーロであり、日本円は108.60円である。数学的には日本円のほうが他通貨に比べ絶対値が大きいため、数字を動かしやすく、前後の振れ幅のインパクトが大きい。つまり、ハイリスクになる可能性が高くなる。その意味で、日本での投資には覚悟が必要だ。

 日本市場だけでなく海外市場についても、地政学上のリスクをある程度は理解したい。そうしたリスクは経済・財務指標のデータに如実に反映される。なので各国のGDP、消費者物価指数、失業率、経常収支、予算収支、金利、対ドルのレート、主要通貨の動きは確実に押さえたほうが良い。

 これらの指標は、一般の経済雑誌などで容易に入手できる。最低限、これらの指標データと各国の株式市場データを理解したうえで投資に臨みたい。