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ヘルスケアの分析:その3=ヘルスケアの辞書【第32回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2020年3月30日

精神疾患をキーワードにした分析

 次に『精神疾患』をキーワードにして分析する(図3)。精神疾患に関する原因があり、統合失調症などの病気へとつながり最悪なケースでは自死になる。

図3:ヘルスケアの辞書(構造)で『精神疾患』をキーワードに利用する例

 精神疾患は幅広く、クラスタリング(第5回参照)してみると、以下の7種類に分かれる。

(1)気分障害 :うつ病
(2)不安障害 :不安症、強迫症、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)
(3)発達障害 :自閉スペクトラム症、コミュニケーション障害、性別違和、ADHD(Attention-deficit hyperactivity disorder:注意欠陥・多動性障害)、限局性学習症、発達性協調運動症
(4)睡眠障害
(5)思考障害 :統合失調症、パーソナリティ障害、解離症・解離性障害
(6)依存症 :ギャンブル依存、インターネット依存、買い物依存、自傷行為、      物質乱用(薬物関連障害、アルコール関連障害)
(7)反社会性 :秩序破壊的・衝動制御・素行症群

 このようなクラスタリングしたデータをもとに分析し、辞書を作っていく。辞書は適宜更新し最新に保たなければならない。

 ヘルスケアも、効果的に分析するためにはT字、逆T字のような構造を持つ辞書が役に立つ。このヘルスケアの辞書では、抵抗力の低下、精神疾患、栄養の過剰、栄養の不足などがインデックスになり可視化・分類できる。

 結局は、先の先、つまり、B2B2B構造(第8回参照)がポイントでヘルスケアの3本柱の治療・介護・予防に役立てられる。この考え方で、軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)についても分析できる。

データ分析はさまざまなことに利用できる

 今回でヘルスケアの分析は終わりとする。ヘルスケア編ではサプリメントに代表される“モノ”の視点で分析した。だがモノは、サプリだけではなく身の回りのさまざまなことで解析できる。たとえば、空気清浄機や部屋で使う掃除のモップでも、その使用の有無で健康に与える影響が分析できる。

 空気の汚れでは、人体だけでなく電子機器や記録媒体に与える影響も軽視できない。空気清浄機は飛び散る塵を、モップは床に落ちた塵を吸着するので、風邪の予防や花粉症の症状の軽減には予想以上の効果がある。健康以外にも、さまざまなことにデータ分析が有効に使えることを読者には知ってほしい。

 次回は、5大アセットの別の要素である“ヒトに関する分析”について解説する。人を中心に、さまざまなこととの相性を取り上げる。

入江 宏志(いりえ・ひろし)

DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。2017年にデータ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。

ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。