• Column
  • Digital Vortex、ディスラプトされるかディスラプトするか

デジタル化がもたらす破壊的ビジネスモデル【第2回】

今井 俊宏(シスコシステムズ イノベーションセンター センター長)
2017年12月11日

身近なところにディスラプションが潜んでいる

 いずれかの業界で強力なディスラプションをもたらしている企業をよく観察すれば、ここで示した3つのカスタマーバリューと合計15のビジネスモデルに似たパターンが見いだせると思う(図2)。

図2:ディスラプターが提供するカスタマーバリューとビジネスモデル

 筆者が2013年に、『Internet of Everythingの衝撃』(インプレスR&D)という本を出版した際に使用した「NextPublishing」(同)という電子出版プラットフォームは、今にして思えば、組み合わせ型デジタルディスラプションの好例であった。当時は、Digital Vortexの概念すら生まれていなかった。

 たとえば、NextPublishingでは、編集・制作・流通をすべて全てデジタルにする手法により、圧倒的な低コストで書籍を発行できる。物理的な書籍を在庫として持つ必要がないため維持費も掛からない(コストバリュー)。購入は、電子書籍か印刷書籍かを自由に選択できる(カスタマーエンパワメント)。プリントオンデマンドの利用で、必要な時に必要な冊数だけ印刷でき(従量課金制)、かつAmazon.comという巨大なチャネルで扱われる(プラットフォームバリュー)。まさに、身近なところで体験したディスラプティブな取り組みであった。

 今回触れたカスタマーバリューとビジネスモデルの中に、皆さんにとってのヒントがあれば幸いである。

 なお、デジタルボルテックスを解説した『対デジタル・ディスラプター戦略』(日経経済新聞出版社)が2017年10月24日に出版されている。こちらも、ぜひ、ご覧いただければ幸いである。

今井 俊宏(いまい・としひろ)

シスコシステムズ合同会社イノベーションセンター センター長。シスコにおいて、2012年10月に「IoTインキュベーションラボ」を立ち上げ、2014年11月には「IoEイノベーションセンター」を設立。現在は、シスコが世界各国で展開するイノベーションセンターの東京サイトのセンター長として、顧客とのイノベーション創出やエコパートナーとのソリューション開発に従事する。フォグコンピューティングを推進する「OpenFog Consortium」では、日本地区委員会のメンバーとしてTech Co-seatを担当。著書に『Internet of Everythingの衝撃』(インプレスR&D)などがある。