• Column
  • Digital Vortex、ディスラプトされるかディスラプトするか

デジタルビジネスを成功に導く「デジタルオーケストラ」【第10回】

今井 俊宏(シスコシステムズ イノベーションセンター センター長)
2018年8月13日

セクション2:エンゲージメント

 キーとなる各ステークホルダーとの関係を担当するセクションである。3つの考慮すべき領域がある。

領域3:カスタマー

・デジタル技術を用いて、どのようにカスタマーとの関係を構築するか
・カスタマーから、どのようなデータや情報を収集するか
・カスタマーに、どのようなデータや情報を提供するか

領域4:パートナー

・パートナーと、どのように連携し支援を得るか

領域5:従業員

・ビジネスモデルが変わった際、従業員が専門知識を吸収し、フルに活用するにはどうすれば良いか
・どうすれば最適な人材を獲得し、維持できるか

セクション3:オペレーション

 デジタルビジネスに適応するためのオペレーションを担当するセクションである。2つの考慮すべき領域がある。

領域6:プロセス

・どのように新しいプロセスを構築し実行するか
・どのように既存のプロセスを変更するか
・新たなデータや情報を利活用できるように、どのようにプロセスを変えていくか
・デジタル化や自動化が必要なプロセスは何か

領域7:IT

・デジタルサービスと新しいプロセスを実現するのに必要なIT技術は何か
・どのようにしてITがビジネスに貢献し、カスタマーバリューを提供するか

セクション4:社内環境

 社内環境を担当するセクションである。3つの考慮すべき領域がある。

領域8:組織構造

・新たな事業部門を設立する必要があるか
・その場合、既存の事業部門と共存できるか

領域9:インセンティブ

・報奨システムをどのように変更するか
・組織横断的なコラボレーションや情報共有をどのように評価するか

領域10:カルチャー

・従業員の行動、動機、認識をどのように変え、変化を受け入れるように促すか

デジタルオーケストラの成否は最後は人材に依存する

 優れた楽曲に、優れた演奏があって初めて美しいシンフォニーが奏でられる。同様にデジタルディスラプションにおいても、上記の10領域を上手く連携させる必要がある。さらに、1つの楽器だけで演奏するよりもフルオーケストラの方がインパクトあるように、さまざまな組織要素が調和し、同時に連携して機能する必要がある。企業のオペレーションモデル全体に渡って包括的な連携が実現できれば、美しいシンフォニーのように、デジタルディスラプションを実行できるはずだ。

 戦略と方向性、各セクションの調和が重要なことは先に述べたとおりである。しかしデジタルオーケストラの成功は、最終的には演奏者(従業員)のスキルと能力に掛かっている。高度な演奏のためには、演奏者のスキルを、個人としても、全体としても常に磨き続けなければならない。スキルが貧弱であったり、低下したりすれば、オーケストラ全体に影響が及んでしまう。

 デジタルオーケストラの場合、たとえばITスタッフであれば、デジタル技術に関わるアーキテクチャーやシステムを理解する必要がある。人事スタッフであれば、デジタル技術に精通する人材を獲得・教育・維持するためにデジタルツールを活用しなければならない。このように、個々のスキルを高め、常に最新状態に保つことで、デジタルオーケストラは、より高い実行能力を保持できることになる。

 オーケストラの各奏者は、バロックからモダンな曲まで、さまざまなスタイルの音楽を演奏できるだけの高いスキルと多様なレパートリーに加え、急な楽譜の変更にも迅速に対応できる能力が求められる。これは、第6回〜第8回で紹介したデジタルビジネスアジリティの各能力、つまりハイパーアウェアネス(察知力)、情報に基づいた意思決定力、迅速な実行力を常に切磋琢磨することに他ならない。