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米国勢GAFAと中国勢BATが繰り広げるデジタルの覇権争い(前編)【第12回】

今井 俊宏(シスコシステムズ イノベーションセンター センター長)
2018年10月9日

デジタル化を先導する代表的プレーヤーといえば、本連載でも度々登場する「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」などの米国勢と「BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)」の中国勢を誰もが思い浮かべると思う。個人ユーザーのデータを集約し、デジタル事業への活用に長けた両国のデジタルプラットフォーマーの動向から、デジタルボルテックスの今と今後の行方を推察する。

 米国と中国。この両国を代表するデジタルプラットフォーマー達は当初、それぞれが手掛ける事業領域が異なっていた。それが、デジタル技術を駆使した戦略的事業の拡大に伴い、多くの事業領域で直接的な競合関係が生まれつつある。

 米国勢の「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」などと、中国勢の「BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)」らデジタルプラットフォーマーを中心に現在、市場で熾烈な競争が繰り広げられている事業領域は、以下の13分野に整理できる。

領域1:デジタルコンテンツとメディア
領域2:AIと機械学習
領域3:オンライン・コマース
領域4:オフライン・コマース
領域5:ハードウエア・サービス
領域6:ITとクラウドサービス
領域7:メッセージング・サービス
領域8:ナビゲーション
領域9:ビジネス・サービス
領域10:ファイナンシャル・サービス
領域11:広告サービス
領域12:オペレーティング・システム(OS)
領域13:検索エンジンとブラウザー

 GAFAは、スマートフォンやクラウドプラットフォーム上で次々にサービスを生み出し付加価値を創造してきた。この流れが止まることはない。自動運転技術やフィンテック(Fintech)、ビジネス向けクラウドサービスなどの事業へと裾野は拡大し、さらなる競争を繰り広げているのは、周知の事実だ。

 一方の中国では、インターネットに対する規制を強め、GAFAら影響力が大きい米国系インターネットサービスを段階的に遮断してきた結果、Baiduが検索エンジン分野で、AlibabaがEC(電子商取引)分野で、TencentがSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)と、それぞれが独占的な地位を占めてきた。

 だが2015年、インターネットを各産業と融合させ新たなビジネスの創出を図る「インターネットプラス政策」が発表されると、BATに代表される中国のIT先端企業は、ITサービス、EC、決済サービス、デジタルメディアなど多くの事業で競合するようになっている(図1、図2)。

図1:デジタルの覇権を争う米国勢GAFAと中国勢BAT(領域1〜7)
図2:デジタルの覇権を争う米国勢GAFAと中国勢BAT(領域8〜13)

 両国のデジタルプラットフォーマーは、デジタル化で新市場への参入が技術的に容易になったことに加え、新しい事業領域への参入に非常に積極的であることから、今後もさまざまな事業で競合するものと考えられる。