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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
デジタルによるスマートシティを目指す会津若松市【第1回】
〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜
市民と行政のコミュニケーションプラットフォームとなる「会津若松+(プラス)」では、2015年12月の開設以来、これまで5万人近くのユニークユーザーが閲覧しており、利用者の属性や嗜好にパーソナライズされた情報を提供している。例えば、子供を持つ市民には予防接種の情報といった行政情報のほかに、市内小学校のクラスのお知らせなどが提供される。
また、登録している住所に合わせて、近隣の除雪車の運行情報がリアルタイムにわかる。これは、雪深い会津若松にあっては、外出に非常に役に立つと好評だ。ほかにも、地域の店舗のチラシ広告が閲覧できたり、デジタル上の郵便箱で文書を閲覧・保管できたりなど、市民生活に直結した情報が手に入る。
産学官連携で地方創生の実証モデルを目指す
こうしたスマートシティ構想を実現するために会津若松市は、大きな推進力となる「会津若松(現・会津地域)スマートシティ推進協議会」を2012年5月に発足。それを機にデジタル化への舵を大きく切った。協議会の実態は、会津若松市のほか、会津大学、地元企業、地元に拠点を持つ大企業による産官学連携の団体である。アクセンチュアも、その立ち上げ以来のメンバーとして、多様なプロジェクトを推進してきた。
具体的には、アクセンチュアは2011年8月、会津若松市内に「福島イノベーションセンター」を開所し、市のパートナーとして地域に根差した産学官連携を支援している。同センターでは、2019年中には200人超のプロジェクト推進体制を整備すべく拡充を図っている。
福島イノベーションセンターは当初、復興支援からスタートした。それが今では、会津地域の先端デジタル技術やサービス実証フィールドとしての特性を活かし、全国のモデルとなる地方創生の仕組みを作ろうと、20以上のプロジェクトを実施し、高付加価値な業務、競争力の高いサービスを会津から全国に向けて展開している(図3)。
会津若松市のスマートシティの取り組みは、産業誘致政策とも連携している。2015年7月には「会津若松市まち・ひと・しごと創生包括連携協議会」を発足。産官学金労言地域の分野から39団体(2017年8月9日現在)がデジタル技術を活用した産業振興・地方創生に取り組んでいる。アクセンチュア以外にも国内外企業を呼び込んでおり、国内大手SIベンダー数社や、セキュリティ関連企業、フィンテック関連企業など十数社が候補に挙がっている。
さらに、地元のベンチャー企業などを含む、その受け皿として、会津若松市内にICT関連企業の集積地となる「ICTオフィスビル」も建設中だ(図4)。2019年に完成予定のICTオフィスビルは、首都圏からの新たな人の流れと雇用の場を創出し、会津大学卒業生などの地元定着を図ることで、東京一極集中の緩和と地域維持発展を目指す。