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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

デジタルによるスマートシティを目指す会津若松市【第1回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2017年11月22日

会津若松市は、福島県西部に位置する人口12万人の地方都市である。他の地方都市同様に、かつて栄えた産業の縮小や少子高齢化といった課題に直面している。その会津若松市は、未来につながる、まちづくりに向けて「デジタル化」「スマートシティ化」を選択した。本連載では、そのプロセスをつまびらかにしていく。第1回は、会津若松市の立ち位置をまずは理解していただくために、その現状を紹介する。

 福島県西部に位置する会津若松市、それが本連載の舞台だ。かつては東北地方の要所として栄え、松平家が収めた会津藩の中心地である(図1)。2017年10月時点の人口は約12万人という地方都市で、夏は暑く冬は雪深い、典型的な盆地気候だ。

図1:会津若松市内にそびえる鶴ヶ城

 その日本の伝統的な田園風景を残す町並みや、東山温泉と芦ノ牧温泉、そして戊辰戦争時の白虎隊やNHK大河ドラマ『八重の桜』(2013年)にも描かれた歴史などが、多くの観光客を惹きつけている。

 一方で、かつては半導体製造などによって栄えていた産業も、工場の移転や縮小が進んでいる。日本の多くの地方都市同様に、若い世代の流出による生産年齢人口の減少、少子高齢化といった課題にも直面している。

会津若松のスマートシティ構想はビッグデータ活用が前提

 「スマートシティ」とはもともと、エネルギー利用の効率化や再生可能エネルギーなど、CO2(二酸化炭素)削減を目的とした取り組みを指すことが多かった。昨今はエネルギーや資源の利用効率向上を目的とした概念から拡張し、スマートフォンの”スマート”同様、ICT(情報通信)技術やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術などを活用し、市民から企業、投資家、観光客までに対し、賢く便利な街を目指す取り組み全般を指すようになっている。とはいえ、エネルギーやヘルスケアなど特定の領域に特化してスマート化を目指すプロジェクトが多いと言える。

 では、会津若松市が目指すスマートシティはどうか。その特徴は個別領域のスマート化を目的にするのではなく、都市経営を網羅した7領域、すなわちエネルギー、観光、医療、教育、農業、金融、移動手段を横断した社会基盤を構築することで「ビッグデータ・アナリティクス産業を創出することによる地方創生」を目的にしている点にある(図2)。

図2:データに基づいた市民中心のスマートシティ全体概念

 その実現に向け、東日本大震災後の2011年12月に復興計画を策定し、2012年から本格的な取り組みを始めた。以来、早5年が経つ。ビッグデータ・アナリティクスを基盤としたスマートシティへの取り組みの詳細は今後、本連載で順次紹介していくが、その一部を紹介しよう。

 例えば、デジタルDMO(Destination Management Organization)の取り組みがある。DMOは、地域の観光事業を活性化させるために、ステークホルダーを巻き込みながら戦略を確実に実施する法人で、観光庁によれば、以下のように定義されている。

 「地域の“稼ぐ力”を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりのかじ取り役として、多様な関係者と共同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人のこと」

 会津若松では、これをデジタルで実施することで、外国人観光客が前年比で140%以上に増加した(参考資料『会津若松市の「V(ビジットジャパン)」案内所 外国人利用者数』)。他にも、省エネ推進プロジェクトにおけるエネルギーの見える化により、最大27%削減といった効果を出している。