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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
デジタルに向けた会津若松市の資産と課題【第2回】
〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜
会津地域が持つ“資産”を最大限に生かす
まるで導かれるようだった会津若松市への訪問後、アクセンチュアは異例のスピードで「アクセンチュア福島イノベーションセンター」を設置。2011年8月1日からコンサルタント5人が活動を開始した。まずは現状把握に十分な時間を費やし、会津若松市・会津大学・アクセンチュアの3者が毎週、復興計画策定会議を開催した。
そして5カ月後の2011年12月、『会津復興8策(現在の『会津復興・創生8策』)』の第1版が完成した(図1)。
この復興8策の実現に向けて策定したのが「会津若松スマートシティ計画」である。世界各国で取り組みが始まっていたスマートシティの基本計画を青写真にしつつ、会津地域の現有資産を棚卸しすることで、その特徴を活かした計画になっている。
棚卸しから見えてきた会津の資産とは、以下の通りである(図2)。
資産1:会津地域は、磐梯山・猪苗代湖による豊富かつ上質な水資源が、多くの産業の基礎をなしてきた。エネルギーとしては水力発電に、工業用水としては精密機械工場の誘致に、それぞれ効果を発揮してきた。さらに豊かな水資源は、米や酒、在来種である会津伝統野菜を育み、盆地特有の寒暖差がさらに食を豊かにしている。
資産2:肥えた土地を拠点に構えた会津藩の歴史遺産は観光資源として産業の中核をなしている。活火山である磐梯山周辺には温泉が点在し、観光地としての魅力を確実にした。地熱を活用する発電所もある。
資産3:明治維新後の長らく、会津地域の念願だった大学の誘致が、1993年に日本で初めて開学した「コンピューター理工学専門大学」として実現した。
資産4:会津地方の中核都市ある会津若松市には、800床を超える総合病院が3つあり、人口12万人の都市として十分な医療体制を有している。
現状を調査・分析したうえで、既存の要素をマッチングやカスタマイズ、あるいは新たに創り上げる要素を盛り込み、今後の会津の“あるべき都市”の素案を作り上げた。
スマートシティ基本計画は、大きく6つの戦略からなっている。
環境のマイナス面を削減する戦略
1.CO2削減の環境政策
2.再生可能エネルギーへのシフトと省エネルギーの促進プロジェクト
地域のプラス面を引き出す戦略
3.市民の生活環境としての医療体制の充実、教育レベルの向上、居住環境整備などの視点
4.企業立地条件を充実させるための政策
5.公的資金の投資先としての魅力を向上させる政策
6.観光客からの視点