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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
デジタルに向けた会津若松市の資産と課題【第2回】
〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜
会津の課題解決は、多くの地方に共通の課題を解決すること
会津若松市、会津大学、アクセンチュアの3者は協議を重ねるなかで、ある時点から共通の認識を持つようになっていた。会議では、そもそも会津若松市のための復興計画を策定していた。だが、そこで協議され整理された課題のほとんどは、多くの地方が抱えている共通課題であり、それは「日本が抱える課題ではないか」と気づいたのである。その結果、計画の骨子は、日本が抱える課題をデジタルで、どこまで解決できるかに挑戦する内容になっている。
この段階で3者は、会津若松市のスマートシティ基本計画を単なる一都市の復興計画で終わらせるのではなく、地方創生の先駆けとして国からの投資を引き出し、デジタルによる先端実証事業を誘致する方針を固めた。日本の全人口の1000分の1を有する会津若松市は、国内問題を解決するための実証フィールドの位置付けだ。こうして会津若松市は、デジタル化を受け入れる決断をしたのだった。
『会津復興・創生8策』の中核は、データによる科学的根拠に基づいた政策策定にある。データは、人・モノ・金に続く“第4の経営資源”ともいわれる。そのデータを戦略の中心に位置づけたのが最大の特徴である。会津若松市を実証フィールドにするために、市も動いた。
たとえば、政策提言団体となる「まち・ひと・しごと地方創生包括連携協議会」を多くの企業や団体を巻き込んで発足。スマートシティ事業を現地で推進・運用するための「スマートシティ推進協議会」も連携組織として立ち上げた。これによって多くの民間企業と国の政策の連携を明確に示し、『会津復興・創生8策』を実現するためのプロジェクトを次々に起こしていくことになる。
次回は、すべてのプロジェクトの共通テーマである、「データに基づくスマートシティ計画」の全貌を解説したい。
中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)
アクセンチュア福島イノベーションセンター センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、国産ERPパッケージベンダー、EC業務パッケージベンダーの経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、地方ITベンダーの高度人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興に向けて設立した福島イノベーションセンターのセンター長に就任した。
現在は、東日本の復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中のデザインから分散配置論を展開し、社会インフラのグリッド化、グローバルネットワークとデータセンターの分散配置の推進、再生可能エネルギーへのシフト、地域主導型スマートシティ事業開発等、地方創生プロジェクトに取り組んでいる。