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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

会津若松が市民参加型で推進するデジタルガバメントの姿【第5回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年3月15日

(3)母子健康情報サービス

 国が推進する母子健康手帳サービスをデジタル上で受けられる。市民はマイナンバーカードを使って本人認証することにより、自身に関連性の高い情報に安全にアクセスできる。サービスに登録すると、たとえば、乳幼児健診の結果閲覧や育児日記の登録などを、家族と情報を共有しながら利用できる。予防接種のスケジュールや子育て支援情報なども受け取れる。

(4)日本郵便のデジタル郵便「MyPost(マイポスト)」サービス

 将来的に想定される全文書デジタル化を見据え、日本郵便の「MyPost」サービスと連携して、本人確認が必要な公的文書などを電子文書で受け取れる。

(5)教育情報連携「あいづっこ+(プラス)」

 市内の幼稚園、小学校、中学校と家庭をデジタルでつなぎ、学校から家庭へのお知らせや学校での日々の出来事などを直接受け取れる。情報の伝え漏れや問題の発生を未然に防ぎ、学校と家庭のつながりを密にすることで、地域の教育環境の向上を目指す。

(6)「除雪車ナビ」サービス

 除雪車が現在どこを除雪中で、自分の地域にはいつ頃来るのかという情報を受け取れる。積雪量の多い地域では除雪情報は生活に直結した重要情報であり、市役所への問い合わせ件数も多く、市側の業務負荷も高い。除雪車にGPS(全地球測位システム)を搭載し、現在位置情報をウィジェットにリアルタイムに配信することで、除雪までの待ち時間によるストレスを緩和するほか、除雪車の配備計画などにも活用している。

(7)訪日外国人向け観光情報提供サービス

 訪日外国人向けに会津若松市を中心とした周辺広域7市町村の観光コンテンツを提供している。外国人と一口に言っても、食やアクティビティなどの嗜好の傾向性が異なるため、国別の嗜好性でパーソナライズしたレコメンデーションコンテンツを提供するほか、訪日外国人が困ることの多い二次交通の情報も掲載している。本サービスの詳細は、観光プロジェクトの回で改めて紹介する。

国の行政手続きポータルとの連携も計画

 このように会津若松+は、デジタルガバメントの実現に最も重要な市民窓口をデジタルで実現したサービスだ。デジタルガバメントの推進は、行政の効率化のためだけにあるのではない。市民と行政のつながりを強化した市民参加型のスマートシティの実現には必要不可欠である。アクセンチュアが提供しているDCPは、市民と行政が必要とする情報をオープンにし、両者がフラットな関係性の中で成果をシェアするモデルを実現に導くものだ。

 現在、国の政策としても、マイナンバーカード認証により行政手続きのワンストップサービスを実現する「マイナポータル」の導入が推進されている。地域情報ポータルが日々の生活に不可欠な市民の窓口であるとすれば、会津若松+は、必要に応じて行政手続きポータルとシームレスに連携できることが望ましい。そのため、国と会津若松市の両サービスの連携機能の導入を計画している(参考資料の25ページ)。

 国全体が行政サービスのデジタル改革を推し進め、「原則デジタル」で行政サービスを提供するための基盤整備/法整備を進めるなか、会津若松市の取り組みや会津若松+が1つのモデルになれば幸いである。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア福島イノベーションセンター センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、国産ERPパッケージベンダー、EC業務パッケージベンダーの経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、地方ITベンダーの高度人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興に向けて設立した福島イノベーションセンターのセンター長に就任した。

現在は、東日本の復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中のデザインから分散配置論を展開し、社会インフラのグリッド化、グローバルネットワークとデータセンターの分散配置の推進、再生可能エネルギーへのシフト、地域主導型スマートシティ事業開発等、地方創生プロジェクトに取り組んでいる。