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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

会津若松が市民参加型で推進するデジタルガバメントの姿【第5回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年3月15日

第3回でデータによるスマートシティの全貌を紹介した。そこでは、市民参加型の取り組みによって集めたデータを行政が分析・加工し市民にフィードバックすることによって、データを客観的にとらえられ、市民一人ひとりの気づきと行動変容につながり、それがスマートシティの成功につながると指摘した。今回は、デジタル技術を用いた市民と行政とのインタラクティブな日常のコミュニケーションである「デジタルガバメント」の重要性と、それを実現するための方法を解説する。

 “まちづくり”における主役は市民である。それだけに行政と市民のコミュニケーションのあり方は、全国の多くの自治体が抱える課題であると言えよう。

 特に、市民参加型のスマートシティや地方創生に関わるプロジェクトの実現を目指す首長や自治体にとって、市民との密なコミュニケーションをどのように実現していくかは切実で大きな課題である。なぜなら、政策を実現するためには、首長や自治体の政策を市民一人ひとりに確実に届け、政策に対する理解を深めてもらい、市民からも意見が集まるインタラクティブな関係を構築していくことが重要だからである。

 会津若松市もまた、同じ課題を抱えていた。これまでも行政の公式ホームページのほか、市政だよりやポスターなどの紙媒体、市民と直接対話するタウンミーティングなどの開催、地元紙による報道など、さまざまな情報発信手段を駆使し、市民に行政情報を届ける努力を続けてきた。しかし、どうしても市民全体に向けたマス情報かつ静的な情報の提供にとどまってしまうためか、市民の関心は高まりにくかった。

 たとえば、公式ホームページへの市民の月間平均アクセス回数は1人当たり0.9回。タウンミーティングの参加者数は全市民の1%にも満たないといった状況がみられた(参考資料の15ページ参照)。行政側としては、各種メディアを駆使して情報発信に取り組んでいるつもりでも、市民側からすれば、「聞いていない」「伝え方が不十分だ」と感じるような、両者の間に生じた溝が埋められないでいた。

コミュニケーション率30%に向けDCPによる地域ポータルを開始

 この課題を解決するために、会津若松市は2015年12月に地域ポータルサービス「会津若松+(プラス)」の提供を開始した(図1)。市民とのインタラクティブな情報共有を目指す同サービスは、市民サービスの“デジタルな窓口”である。従来のように、すべての市民に向けて一律なマス情報の提供ではなく、市民一人ひとりの属性情報に沿ってパーソナライズした、本当に必要とされている地域情報を提供している。

図1:「会津若松+(プラス)」の画面例

 パーソナライズを実現しているのが、アクセンチュアが提供した「デジタル・シチズン・プラットフォーム(DCP)」である。会津若松+は、DCP上に構築・運用されている。同サービスを利用する個人の「パーソナルファイル(サービスID登録時に入力された個人の属性情報)」と、過去のアクセスログはDCP上に蓄積され、それを基に利用者属性に合った情報を優先的に表示する。

図2:「会津若松+(プラス)」が動作しているデジタル・シチズン・プラットフォーム(DCP)」の概念

 これにより市民は、必要な情報を探すための検索キーワードを考えたり、大量の類似情報から必要な情報を特定したりしなくても、必要な行政情報を取得できる。デジタルに対して苦手意識を持つ市民や高齢者層に配慮したサービスになっている。高齢者層に対しては、より最適なレイアウトが設定できるなど、高いユーザーアクセシビリティを用意した。