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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

予防医療へのシフトを促す会津若松のIoTヘルスケアプロジェクト【第7回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年5月24日

日本の平均寿命は世界一であり長寿大国として知られる。だが医療費の多くは、終末期や延命に費やされている。会津若松市もまた例外ではない。1995年をピークに市の人口は減少傾向にあり、社会保障費の拡大が課題になっている。そこで、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などの技術を生かし予防医療を推進するための「IoTヘルスケアプラットフォーム事業」に2016年より取り組んでいる。今回は、これまで実施してきたIoTヘルスケアプラットフォーム事業の内容とこれからの計画について解説する。

 1961年、日本では国民皆保険制度が導入され、だれもが低負担で充実した医療を受けられるようになった。しかし、超高齢社会に突入した今、医療費は2016年に41兆円超にまで膨れ上がってしまった。このすべてを国費で負担しているわけではないが、規模の目安として国の予算100兆円弱と比べても、どれだけ巨額かがわかるだろう。

 国民皆保険制度は、医療をだれでも受けやすくした半面、国民の予防医療へ意識を下げたと言えるかもしれない。持続可能な制度にするためには変革が求められることは明白だ。“健康長寿国”に向けて、この問題を解決するにはどうすれば良いのだろうか?

 重要なのは、市民が積極的に健康的な生活へシフトすること、医療機関が予防医療に向けた支援体制を充実させること、地域行政が市民に積極的に啓もうすることである。さらに、健康長寿社会への変革をヘルスケア関連産業全体が連携して推進していくことが大切であろう(図1)。

図1:持続可能なビジネスモデルに向けた関係相関図

ウェアラブル端末などで健康を見える化し行動変容を促進

 こうした問題意識から2016年にスタートしたのが、IoTヘルスケアプラットフォームプロジェクトである。市民モニター約100名にウェアラブル端末を提供し、日々のバイタルデータを収集することで健康状態を見える化し、行動変容を促している。

 ほかにも、センサー付きお薬ボックスを提供し、処方された薬を時間通りに摂取することを促したり、ベッドにセンサーを取り付けて睡眠状態を見える化しり改善を促したりしている。

 HEMS(Home Energy Management System)を使った省エネプロジェクト同様、データの見える化は市民が行動変容を起すきっかけになり、参加市民の予防医療への関心は高まっている。さらに医療機関においても、アンチエイジングの施設が市内に新設されたり、予防医療専用棟が竣工したりと変化が起き始めている。

 最も重要なポイントは、データの分析結果が、データの提供者である市民や、医療関係者、さらには医療の発展に寄与する各産業に対し、価値ある成果を提供できるかどうかである。そのためには、データクレンジングを必要としない正確なデータを、いかに市民の負担を減らしながら取得・収集できるかが大切になってくる(図2)。

図2:会津若松市における予防医療に向けた「IoTヘルスケアプラットフォーム