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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
会津若松スマートシティプロジェクトの核となる「都市OS」【第9回】
〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜
「都市OS」の実現に向けリリース前に情報を公開
さらに会津若松市での都市OSの開発に向けては、多くのIT企業に対して開発概要と計画を最初から公開し、関係者で情報を共有した。OGCや地域のベンチャー企業とのアライアンス体制によって開発することも宣言した。
従来のシステム開発では、リリース前にシステム開発情報を公開するといったことは考えられなかった。それゆえ情報が共有されず、各所で同じようなシステムが重複開発される状況が起こっていた。
会津若松市の都市OS開発において、あえて情報公開に踏み切った理由は、まさに、このような慣習を変えたかったからである。これまで十分に進展してこなかったシステムの共通化・標準化を、このプロジェクトで実現したかったのだ。
そのため、アライアンスメンバーには情報公開の意義を伝え、重複するシステムを開発しないよう理解を促した。だが、それでも一筋縄ではいかず、なんとか進めてきたことも、また事実である。
利用率(アウトカム)にこだわった市民ファーストのサービス提供
今、世界で広く活用されているデジタルサービスに目をやると、B2C(企業対個人)とB2B(企業間)の別にかかわらず「ユーザーとは、あくまでもサービスを利用するエンドユーザーである」ことを前提にした“ユーザー起点”のサービス開発が進められている。操作マニュアルを見なくても直観的に操作でき、誰もがすぐにサービスを利用できるなど、多くのユーザーに支持されるサービスを開発・提供することに徹底的にこだわり続けている。
自治体の市民向けサービスも同じように考えるべきではないだろうか?地域の情報や自分の興味・嗜好に合った情報など、市民目線で本当に必要な情報を提供できるサービスを開発するべきである。
これを会津若松市の都市OS上で実現しているのが、市民ポータルの「会津若松+(プラス)」だ(図2)。市民の属性・登録情報に合わせて、子供の予防接種情報や市内小学校の行事予定、自宅周辺の除雪情報などに加え、地元紙と連携した地域ニュースなど「10分圏内」の情報が一つのポータルで見られる。市民が求める便利なツールやサービスの提供と、その結果(アウトカム)としてのサービス利用率の向上に、当初からこだわり続けている。KPI(重要業績評価指標)として利用率30%を設定しているが、2018年3月末時点で20%まで達成できている。
スマートシティプロジェクトを支えるすべてのアライアンス企業が、市民ファーストにこだわったサービス開発を実践していけるようサポートする仕組みも整備している。それがオープンイノベーションプラットフォーム「DATA for CITIZEN」であり、都市OSの中核をなすサービスに位置付けている(図3)。