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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

会津若松スマートシティを地域で支えるローカルマネジメント法人【第10回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年8月23日

実証した成功モデルは、いち早く実装すべき

 スマートシティは新たな取り組みではあるが、単に実証を繰り返しているだけでは意味がない。成功モデルは、いち早くサービスとして実装し、市民の参加率を高めていかなければならない。

 そのためにはレベルの高いアイデアが集まる体制や、地域で実装可能かどうかを多角的に検討・判断ができる体制、そしてプロジェクトの運営と標準化等のサポート体制の整備が重要になってくる。従来の特定組織によるサービス提供とは異なり、市民参加型の共助体制(アライアンス)によるサービス提供モデルを創り上げていくことこそが鍵になる。

 日本ではこれまで、大手企業主導による多くの行政システムが構築されてきた。現在、それらが緩やかに連携するエコシステムへの移行期に入っている。前回も触れたように、行政が市民に支持されるサービスを提供するためには、既存の組織体制にとらわれず、官のみならず産学などとも最適に連携できるエコシステムに変化する必要がある。

 会津若松市のスマートシティは、そのモデルともいえるプロジェクトであり、行政サービス提供モデルが、これまでとは全く異なっていることを改めて強調したい。そしてそれは、利益追求型ではないローカルマネジメント法人が運営するからこそ、持続可能な地域再投資モデルが実現できるのである。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア福島イノベーションセンター センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、国産ERPパッケージベンダー、EC業務パッケージベンダーの経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、地方ITベンダーの高度人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興に向けて設立した福島イノベーションセンターのセンター長に就任した。

現在は、東日本の復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中のデザインから分散配置論を展開し、社会インフラのグリッド化、グローバルネットワークとデータセンターの分散配置の推進、再生可能エネルギーへのシフト、地域主導型スマートシティ事業開発等、地方創生プロジェクトに取り組んでいる。