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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

会津若松スマートシティを地域で支えるローカルマネジメント法人【第10回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年8月23日

会津若松市のスマートシティの特長の1つが、市民主導による地域参加型モデルを最も重視していることである。そこでは、地域における産官学民が連携した体制が不可欠だ。そのための一形態として「ローカルマネジメント法人」がある。スマートシティの継続的な運営におけるローカルマネジメント法人の重要性について解説する。

 海外を含むスマートシティ事例の多くは企業主導型、特にデベロッパーが主導するプロジェクトである。新たに作る街であれば、その専門家であるデベロッパーが主導して開発することも、また然りだろう。

 しかし、会津若松市のように歴史を敬い日本の伝統文化を守り続けている地方都市では事情が異なってくる。そんな地方都市がデジタルシフトを推進し、市民に支持されるスマートシティを実現していくためには、そこに住む市民が何を大切にし、何を求めているのかを尊重し、地域における産官学民連携の体制を組んで推進していくことが不可欠である。

 地域における産官学民連携の体制として「ローカルマネジメント法人」がある。NPO(非営利団体)法人と株式会社の双方のメリットを取り込んだ事業体で、市場のメカニズムを生かした地域経済の再生を狙って創設された法人形態だ。会津若松スマートシティにおける推進体制は、国・自治体と4つの団体で構成されている(図1)。

図1:会津若松スマートシティにおける推進体制

 各団体は、それぞれが重要な役割を担っている。以下、各団体と、その役割を紹介する。

会津若松市まち・ひと・しごと創生包括連携協議会

 日本内閣の「まち・ひと・しごと創生本部」の指導に基づき、会津若松市で2015年に発足したオープンな会議体であり、スマートシティ関連事業の年間テーマを協議する。国内外の産官学金労言(金労言は、金融機関、労働団体、メディアのこと)+地域の各分野から、およそ40団体が参加する。

 会津若松市は2017年、「第7次総合計画」を策定した。そこでは、スマートシティを街づくりの中核に位置付けている。第7次総合計画に沿って、各団体は実証フィールドである会津で実施したいプロジェクトを会議で提案する。

 各提案を会津地域スマートシティ推進協議会が審議し、実行するプロジェクトを選定する。選定されたプロジェクトは実施計画を策定し、幹事会の承認を受けた後に、会津若松市や福島県、政府に提案・申請するというプロセスになっている。

会津地域スマートシティ推進協議会

 地元を拠点とする産官学15団体以上で構成される会議体である。会津若松市や会津大学をはじめ、金融機関やエネルギー関連、観光、ITの各企業、プロジェクトに関連した行政団体などが参加している。

 本協議会では、国内外から提案されるプロジェクトの中から実施すべきプロジェクトを選定する。その基準は、、地域の課題解決につながる内容であることに加えて、他地域でも展開可能であり、日本社会全体に貢献するようなものであることだ。

 設立6年目となる2018年には、幹事会の役職改選が行われた。今期は地元の大手総合病院である竹田病院が代表理事に就任した。第7回で紹介したIoTヘルスケアプラットフォーム事業を推進するための体制づくりである。時代に合わせて変化する優先課題にも素早く対応できる、柔軟な組織構造を持つ会議体である。