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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

会津若松だからこそ見える日本と世界の動き(前編)【第13回】

アクセンチュア福島イノベーションセンター座談会

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年11月22日

中山 裕介(以下、中山) 私は沖縄の出身ですが、会津大学で学びました。卒業後、2016年にアクセンチュアに入社しましたが、ここCIFの勤務を希望しました。沖縄起点だと「Iターン」組になります。SI案件のほか、実証実験のプロダクト開発にも携わっています。

中山 裕介(なかやま・ゆうすけ)。アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部所属。2016年入社。沖縄出身で会津大学を卒業した「Iターン人材」

 私は、CIFはベンチャー気質が特に濃厚だと思います。会津若松では市をあげてデジタル化やオープンデータ化、ICT(情報通信技術)のコミュニティ活動に取り組んでいます。CIFが得た知見を「会津から日本全国へ」「会津から世界へ」と発信し横展開できることに、やりがいを感じます。

グェン チュ ハン(以下、ハン) 私はベトナムの出身です。夫が会津大学で働くことになったのをきっかけに会津に来ました。引っ越す前に知人から「会津は発展が期待できない田舎ですよ」と聞かされていたのですが、CIFが実行している戦略やスマートシティ関連プロジェクトは最先端そのものです。

グェン チュ ハン。アクセンチュア 会津アナリティクスセンター所属。2013年入社。データ分析官であり、かつ時短勤務制度を活用しているワーキングマザー。ベトナム出身の「Iターン人材」

 ベトナムは世界で15番目に人口の多い国ですし、ドイツの「Industry 4.0」などにも非常に注目しています。CIFの取り組みを海外展開する仕事にも携わりたいと期待しています。

少子化、人口流出の処方箋は”ワクワクする仕事”の創出

中村 みなさんが感じてくれているように、地方都市の課題解決に向けては、「そこで若者が働きたくなるような“ワクワクする仕事”」が不可欠です。そうした魅力的な仕事の創出に向けて、経営層や地方拠点の責任者が全力を挙げる必要があります。

 短日・短時間勤務といった柔軟な勤務制度を用意している企業でも、実践的に運用できているケースは稀です。お子さんの学校行事に親が仕事の都合で行けないなどの現実を改善するなど、働き方改革によるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上も重要です。

 私自身、東京では、地方の実情が非常に見えにくくなる現実を日々強く実感しています。日本を訪れる外国人観光客の数は右肩上がりですが、地方自治体の受け入れ体制は十分に整っているわけではありません。

 たとえば、クレジットカードや電子決済が世界中で急速に普及・拡大しています。ですが、会津若松市でクレジットカードが使える場所は、まだ30%強にとどまっており、外国人観光客増加による経済効果を十分享受できているとは言えないのです。

 デジタル化は本来、地方でこそ真価を発揮します。しかし日本では「デジタル=若者向け・都会的」といった思い込みがあるのではないでしょうか。少子化や東京一極集中問題、格差の拡大、アセットや資産の老朽化問題の改善にデジタル技術が活用できます。その改善は地方経済のテコ入れになり、ひいては日本社会全体の底上げに貢献します。

諏訪 私がアクセンチュアに入社し、会津への配属を希望した理由もまさに、会津で展開しているアクセンチュアの仕事が面白そうだと“ワクワク”したからです。ここには、同じような気持ちを持つ人が自然と集まってくるのではないでしょうか。

ハン 同感です。私の夫が勤めている会津大学は教員の約4割が外国人です。ただ、その配偶者に適した仕事が地元に少ないため、しかたなく自宅で家事が中心の生活をしている人もいます。私はデータ分析業務を担当できていますが、専門知識を持つ人材が活躍できる場が、もっとあれば良いのにと思います。