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会津若松だからこそ見える日本と世界の動き(後編)【第14回】

アクセンチュア福島イノベーションセンター座談会

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年12月20日

齋藤 私の場合、中村さんが言われたようなビッグピクチャー、つまり目的観を我々が持っていることと、仕事との関わり合いにおいて、いかに主体的に動いていくべきかという観点を日常的に伝えることを意識するようにしています。

 CIFは、組織自体が若く、私以外のメンバーは社歴が浅い方が多いだけに、アクセンチュアのDNAを伝える必要があると感じています。ハードウェアスキルでも、アクセンチュア自体がトレーニングの仕組みを整備しています。トレーニングツールを存分に使ってほしいですね。

ハン 私もスキルアップを目標に置いています。社内ツールはもちろん、人脈作りや交流を兼ねて、会津大学が開講している女性プログラマ向け講座などを受講しています。

会津では異業種交流を起こしやすい

中村 会津若松に限らず、地方創生に主体的・能動的に取り組むには、日頃から「日本をどうしていきたいのか」という問題意識を持つことが大切です。でなければ大きな仕掛けは作れません。発想を自由に持ちながら仕事をしてほしいと願っています。

 会津では「無尽:むじん(商人の相互扶助的組織から発展した信用組合等の原型。現代のコミュニティグループのような存在)」の活動が活発です。私は会津に来てすぐに、5つほどの無尽に参加し、いろいろな業界・業種の人と交流を重ねています。いまでは自ら無尽を主宰しています。

 東京で同様のグループを作ろうとすると、同じ業界人の集まりになりがちです。それが、ここ会津では、異業種交流を起こしやすいですね。みなさんは、地元の方との交流を含め、オフタイムをどう過ごしていますか。ワークライフバランスなどを意識していますか。

齋藤 休日には会津のイベントに参加したり、地元企業や大学生とのディスカッションの場に顔を出したりと積極的に交流を図っています。

 会津に来るまでは、製造業に向けた大規模デリバリーを担当してきましたが、ここでは過去に経験したことのない仕事が多数あります。組織を育てたり人を増やしたりと泥臭いことにも携わっています。「新しい企業を立ち上げる」といった経験にほかならず、アクセンチュアでなければできなかった体験だと思っています。それに、家からオフィスまでドア・ツー・ドアで10分程度と、以前では考えられませんでした。

メンバー間の相互作用で経験と知識が高まっていく

諏訪 オフタイムは、他のメンバーと一緒に過ごしたり、カフェ巡りや紅葉を求めて散策したりと楽しんでいます(写真2)。CIFのメンバーは、仲良しだと実感しています。業務時間外でも知識がどんどんシェアされますし、尖った技術を持っている人も増えており、経験と知識量が高まっているのが実感できますね。

写真2:メンバーは、四季折々の自然と接しながらオフの時間を満喫している

中山 実は私は、週末もテクノロジーやプロダクトのことを考えています。学生時代の同級生とルームシェアをしているのですが、その彼と、ものづくりやデジタル技術の話をすることが多いですね。アウトドアでリフレッシュしているときも、頭の中はテクノロジーに関することで一杯です。その意味で、CIFには黎明期のような側面があり、1人ひとり与えられる権限が大きいと感じています。

ハン オフタイムは家族4人で過ごしています。郊外でキャンプをして遊んだり、ガーデニングをしたりしてリフレッシュしています。年に1度、2週間ほどの休暇を取って母国に帰国し実家を訪ねることもあります。今では子供も随分と大きくなりましたが、入社当時は下の子が幼稚園児でしたので、時短勤務を大いに活用しました。

中村 CIFで私が目指すのは、日本の社会課題の解決に向けた地方分散の実現です。地方から地方へのモビリティの整備も重要だと考えています。原状、地方都市から東京に行くのも、東京をハブにして地方都市へ行くのも簡単です。しかしそれは、一極集中の弊害でしかありません。たとえば会津から京都へ行こうとすれば、かなり大変です。

 その解決策として私は、「湖to湖」つまり「飛行艇を使って地方同士を結ぶ交通」を提唱したいと思っています。これが実現すれば、地方同士がより近づき、日本地図の形も変わるのではないでしょうか。それができれば引退してもいいかなと思うほどです(笑)。

 これからも会津若松のスマートシティプロジェクトを推進し、その成果をグローバルに問いかけていきましょう。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア福島イノベーションセンター センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、国産ERPパッケージベンダー、EC業務パッケージベンダーの経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、地方ITベンダーの高度人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興に向けて設立した福島イノベーションセンターのセンター長に就任した。

現在は、東日本の復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中のデザインから分散配置論を展開し、社会インフラのグリッド化、グローバルネットワークとデータセンターの分散配置の推進、再生可能エネルギーへのシフト、地域主導型スマートシティ事業開発等、地方創生プロジェクトに取り組んでいる。