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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

会津若松だからこそ見える日本と世界の動き(後編)【第14回】

アクセンチュア福島イノベーションセンター座談会

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年12月20日

データを核にしたスマートシティの実現に取り組む会津若松市。同市のスマートシティプロジェクトにおいて、重要な意味を持つのが、次代を担うデジタル人材の育成と地元への定着だ。前編では、アクセンチュアの会津若松市拠点である「アクセンチュア 福島イノベーションセンター(Accenture Center for Innovation in Fukushima、以下CIF)」に在席するデジタル人材に、会津若松で働くことの意味などを聞いた。後編では、実際にどのような働き方を実践しているのかについて聞いた。(文中敬称略)

 「アクセンチュア 福島イノベーションセンター(Accenture Center for Innovation in Fukushima、以下CIF)」は、会津若松市のスマートシティプロジェクト推進を支援するためのアクセンチュアの拠点であり、会津大学と連携したデータに強いデジタル人材の育成・定着拠点でもある。CIFには、全国各地から若い人材が集まってきている。センター長である筆者自身、宮城県の出身であり「Jターン人材」だ。

中村 彰二朗(以下、中村) 前編の最後で、私が今注視しているスマートシティとして、カナダのトロントと米国のシアトルを挙げました。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)といった大量データを持つ企業が、この2年間で「ビッグデータよりもディープデータの方が重要だ」と気づき、戦略を転換しているからです。たとえば、トロントではGoogleの関連企業が、シアトルではAmazonが、それぞれスマートシティの実証実験に取り組んでいます。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)。アクセンチュア 福島イノベーションセンター(CIF)センター長。2011年より現職。宮城県出身の「Jターン」人材。趣味はゴルフ

 会津若松市のプロジェクトも、ディープデータの重要性にいち早く気づき、それを実践してきただけに、トロントやシアトルと肩を並べるスマートシティプロジェクトだと言えるようにしたいと考えています。

産業横断型の実証フィールドとしての会津若松市

 スマートシティプロジェクトは公共性が強く、発足時には公共機関の協力が必要です。しかし、民間企業や市民を巻き込まなければ成功には至りません。会津では70以上の製造業が事業展開していますが、それらの企業同士がつながり、生産性向上へ結びつけていくことが重要です。第4次産業革命に向けて、「Connected Industries」を掲げる日本の施策が、日本全体の底上げに貢献します。

 つまり、医療や農業、金融、教育などを連携する産業横断でなければならないのです。産業横断で取り組んで初めて、市民の暮らしを多面的に変革し、多様な市民を巻き込んでいけるからです。

 たとえば、モビリティの見直しとなれば自動運転は重要なテーマの1つです。我々のお客様である自動車メーカーとの協業などにも発展するでしょう。そうした「産業横断型の実証フィールド」になるのが会津若松市です。デジタル開発における実証拠点のメッカのような存在になりたいですね。

グェン チュ ハン(以下、ハン) 専門領域の知見を持つアクセンチュアの他拠点との連携が、ますます密になると思います。私が担当しているデータ分析プロジェクトでは、シアトルのオフィスと連携しながら取り組んでいます。

グェン チュ ハン。アクセンチュア 会津アナリティクスセンター所属。2013年入社。データ分析官であり、かつ時短勤務制度を活用しているワーキングマザー。ベトナム出身の「Iターン人材」。趣味はガーデニング

諏訪 七海(以下、諏訪) 私が担当する開発プロジェクトでは、フィリピンの社員と一緒に仕事をしていますね。

諏訪 七海(すわ・ななみ)。アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部所属。2017年入社、北関東出身の「Iターン人材」。趣味は散策、温泉、日本酒など会津ならではの楽しみを経験すること