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都市OSを駆動させるスマートシティの要となる「地域データ」(後編)【第22回】

パッションを持つ「関係人口」をいかに連携させるか、元総務大臣補佐官 太田直樹さんに聞く

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2019年9月19日

NPOは増えずスタートアップが増えている

太田  市民が地域社会の課題に自分ごととして取り組む、という話をするとNPO(特定非営利活動法人)をイメージすると思いますが、いまはいい意味で選択肢が増えています。

 少し脱線しますが、NPO法(特定非営利活動促進法)が施行された1998年から既に20年が経ちましたが、いくつか気づくことがあります。まず、NPOの数は5年ほど前から頭打ちになっています。

 また、若い業界でありながらNPOの代表者の年齢は、3分の2が60歳以上と、早くも後継者問題が深刻になっています。マクロでみると「自ら動くことで社会を変えられる・社会を変えたい」という20代や30代がNPOには向かっていないと推測できます。NPOは法人税が優遇されていて、社会的な活動に適しているにも関わらず、NPOの利用率が低いのです。

中村  たしかにNPOは増えていませんね。一方で、スタートアップ企業は急増しています。

太田  そうなのです。社会的な取り組みをするならば「NPOよりも株式会社化し、利益と社会貢献を両立しよう」という選択肢が注目されています。これ自体は良いことだと思いますが、他方でNPOには変化が必要だと思いますね。

中村  企業が社会貢献しようとして急速に広まったのがCSR(企業の社会的責任)です。アクセンチュアでも当初は、福島県での取り組みはCSRであるという考え方がありました。しかし私は「モデルが見えたらビジネスへと転換して軌道に乗せていく」こと、すなわちソーシャルインベストメントを提唱し今日まで取り組んできました。

 こうした考え方で、NPO的な事業をビジネスへシフトしているスタートアップ企業は増えているように思います。

パッションあふれる「コトを起こす人材」は日本中にいる

太田  まさにそうした「コトを起こしていく」人が日本中にいます。私もそれに気づいたのは総務大臣補佐官として全国を飛び回っていたときでした。「地方都市での生活」というと、スローライフやエコロジー志向などをイメージしがちですが、もっとギラギラしたエネルギーを持って社会的なインパクトのあるプロジェクトを推進している方々に出会いました。

 これからの地方創生においては、地域外の人材が地域づくりの担い手になる「関係人口」こそが、1つのカギになります。「関係人口」は、移住するまではいかないけれど、頻繁にその土地を訪れて活動をする人たちです。20年以上、さまざまな地方をウォッチしている雑誌『ソトコト』の指出編集長が命名し、国の地方創生でも注目されています。

太田  ひと昔前までは、パッションあふれる人材の活動といえば「渡米して起業」や「日本人が1人もいないアフリカや東南アジアで社会貢献」といったパターンが王道でした。

 しかし昨今は、日本国内でも、そうした人がいます。挑戦する人材にとって、海外と日本の地方が等距離になってきています。

 そうしたパワーを持つ個人と知り合い、つながり、貴重な財産である地域データを活用して価値を創出することを共に考えるマインドセットが必要だと思います。

中村  おっしゃる通りです。日本は市民の参画促進の強化が必要です。マジョリティ層は社会貢献と距離を置きがちですが、もはや時間に猶予はありません。長期的視座に立ったビジョンを描きつつ、実現のために日々の取り組みをグイグイけん引していくことの重要性が、ますます高まっているように思います。