• Column
  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

都市OSを駆動させるスマートシティの要となる「地域データ」(後編)【第22回】

パッションを持つ「関係人口」をいかに連携させるか、元総務大臣補佐官 太田直樹さんに聞く

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2019年9月19日

前編では、スマートシティプロジェクトでは、データを地域全体で管理し、地域の発展のために利用する「地域データ」という新しいモデルの重要性と、その実現に向けたビジョンとパッションの必要性について、元総務大臣補佐官であり、日本各地でデータ活用やスマートシティの取り組みを進める太田 直樹 氏(New Stories代表)に聞いた。後編では、パッションを持つ人材の育成などに掘り下げていく。(文中敬称略)

中村 彰二朗(以下、中村)  アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター長の中村 彰二朗です。前編では、総務大臣補佐官として活躍され、今も地方創生や地域開発におけるキーパーソンとして活躍されている太田さんに「『地域データ』とは何か」を中心にうかがいました。私たちは、地域データを活用しながら、行政、企業、大学、そして地域の主役である市民をつなぐスマートシティプロジェクトを推進しています。これはまさに、地域データの実践的活用への取り組みです。

写真1:アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長 中村 彰二朗

自立意識の高さと”パッション”が会津の地方創生の秘訣

中村  太田さんは、地域に変革を引き起こす(「0 to 1」を実現する)だけの“パッション”を持つ人材の重要性を指摘されました。会津若松市民は、そうしたパッションの源泉として、「歴史に基づく価値観」「自分たちの未来は自分たちで創造していくという自立意識」を持っていると感じています。

太田 直樹 氏(以下、太田)  New Stories代表の太田 直樹です。大樹が育つには、土の質とタネの質の両方が重要です。会津の「土地のよさ」は、歴史にその背景があると思います。

 日本は平成時代の30年間を通じて、さまざまな手を使って地方創生に取り組んできました。しかし、正直に申し上げて「中央頼み」という体質は、あまり改善されていません。「自分たちの街は自分たちで盛り上げる」という意識はなかなか高まりませんでした。その中にあって会津若松市の市民主体モデルはユニークです。

写真2:元総務大臣補佐官でNew Stories代表を務める太田 直樹 氏

中村  会津は自立意識の強い方々が多い土地です。デジタルを駆使して、自分たちと子供たちにとって、より良い未来を創ろうという取り組みを、市民が自ら進めています。この取り組みの成果は他の地域にも応用できるだけに、「自分たちの取り組みが日本各地で役に立つ」とも確信しています。

 歴史から見ても、会津のDNAは「外から来た人を受け入れながら、自ら変わっていく」ことにあると思います。先の市長選挙で再選された室井 照平 市長は、「市民のために、意見が合わない方々を含む、すべての人の力を借り、市民全員で会津をより良くしていきたい。グローバル企業も会津に集結しつつある。知恵を集め、力を合わせていこう」というメッセージを発信し市民の支持を得ました。価値観さえ一致すれば、とことんやっていこうと考える土地柄です。

太田  会津が得た知見やノウハウは、日本中の自治体が参考にしたいものばかりです。市長をはじめとする行政、そして市民と企業による「会津地域スマートシティ推進協議会」のようなドライバー的な存在が中心になり、地域全体が同乗者として進んでいくイメージを持つことが重要だと思います。