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- 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか
「日本型スマートシティ」の鍵を握るアーキテクチャーの構築と標準化【第23回】
〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜
“市民中心・地域主導”による「日本型スマートシティ」の拡大には「標準モデル」と呼べるスマートシティのアーキテクチャーの定義と標準化が重要である。アクセンチュアは蘭アムステルダム市など世界80都市でスマートシティプロジェクトに参画して得た知見を活用しながら、日本型スマートシティの実現に取り組んでいる。今回は日本型スマートシティ実現の要諦を解説する。
内閣府は、政府が掲げる成長戦略である「Society 5.0(超スマート社会)」を実現するためのテクノロジー開発に向けて「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を展開している。その一環として実施される「第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術におけるアーキテクチャ構築及び実証研究」において、スマートシティのためのアーキテクチャーを構築する。
アクセンチュアは2019年11月、同研究の研究開発項目「スマートシティ分野:アーキテクチャ構築とその実証研究の指揮」の委託先として、他の5者とともに採択された。なぜ今、スマートシティのためのアーキテクチャーの研究・開発がもとられているのだろうか。
ナショナルアジェンダとしての「地方創生」
本連載で繰り返し述べてきたように、日本の経済基盤を安定させるための重要課題は、(1)少子高齢化対策と(2)地方産業の生産性向上の2つである。その背景でもある東京への一極集中が、これらの課題の深刻化を加速させている。
日本政府は2014年の第2次安倍改造内閣において、国家レベルの社会課題解決のための行動指針・計画となる「地方創生」を発表。「まち・ひと・しごと創生法」が発足した。
同年に発表された通称「増田レポート」が、多くの地方都市に対し“消滅”の可能性を指摘し、その原因が人口減少にあることを明示したことをきっかけに、多くの地域で、テレワークやサテライトオフィスといった機能移転モデルや、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)関連の実証事業、DMO(Destination Marketing Organization)組織の立ち上げなどが繰り返されてきた。
こうした契機から、2019年11月でちょうど丸5年が経過する。そして2020年4月からは、それらの実証事業から得た成功例の実装フェーズになる「第2次地方創生期間」が始まる。第1次地方創生期間で実証された成功モデルの代表例が、会津若松市が取り組んできたデータ駆動型のスマートシティプロジェクトだと言える。
振り返れば、2001年に森内閣が発足させたIT総合戦略本部は「e-Japan戦略」としてIT国家戦略を策定し、さまざまな取り組みを推進してきた。とはいえ約20年経った今、広く国民が利用する「仕組み」としては改善の余地があるといえる。
このような課題感を踏まえ、2019年5月には、平井卓也 前IT政策担当大臣の旗振りのもと、行政手続きを原則として電子申請に統一する「デジタルファースト法」「デジタル行政推進法」が成立した。平井氏は当時、「日本のデジタル変革の課題は次の3点に集約される」と強調していた。
課題1=国民のマインドセットのチェンジ
市民が地域や国のデジタル変革を理解し受け入れ、積極的にサービスを利用すること。自分の生活を便利にするほか、地域社会や未来のために自らの意思でデータを提供するという形で参加することが重要になる。
課題2=デジタルデバイド対策
デジタル技術の活用の世代間・地域間ギャップを解消していくことが、市民参画のベースづくりにおいて不可欠である。
課題3=アーキテクチャーの共通化
日本には約1700の地方自治体があり、現在は各自治体がバラバラのシステムを構築・運用している。データ連携やユーザーの利便性向上における障壁になっており、これを解消する必要がある。
これらの課題をクリアし、新たなモデルで取り組むことこそが日本のデジタル変革につながるだろう。