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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

「各種サービス×都市OS」の機能連携を会津で実証研究する理由【第24回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2019年12月19日

市民中心・地域主導の「日本モデル」こそが米中とも異なる目指すべき姿

 前回『日本型スマートシティ」の鍵を握るアーキテクチャーの構築と標準化』において「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の研究開発項目「スマートシティ分野:アーキテクチャ構築とその実証研究の指揮(SIP a-2)」を解説し、「なぜ共通化が必要なのか」「その効果や狙いはどこにあるか」を述べた。その具体的な答として現実化していくのが、上記のようなサービス群である。

 スマートシティの開発は各国で始まっている。そのなかで、企業主導で進むのがアメリカ式スマートシティ、バックに国・政府がついて企業が運営するのが中国式スマートシティだ。我々が取り組むモデルは、いずれとも異なる「市民中心・地域主導」の日本式である。ヨーロッパも実質的には日本と共通点が多いので「日本/ヨーロッパ式」と表現してもよい。

 デジタルガバメント実現における先進国エストニアでは、市民が「e-ID」を利用し多くのサービスをデジタルを通じて利用することが、地域の市民生活の利便性や産業の活性化に貢献している。日本でも、こうしたカルチャーが当たり前の姿になるように、市民参画を地道に呼びかけていくのも地域の運営者の重要な役割だ。

 2020年3月に地方創生の第1期は終了する。続く2020年4月から2024年3月までの5カ年計画として地方創生第2期(第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」)が発足する。地方創生における政策の多くで、スマートシティは中心的存在として掲げられていることからも予想できるとおり、SIP a-2での実証実験の成果は、2020年4月から続々と全国展開していくフェーズに入るだろう。

 スマートシティ・アーキテクチャーの標準化とは、すべてのまちが同じになってしまうことではない。これまで1700以上ある日本の自治体がシステムの維持に掛けていたコストや負担を軽減し、効率的かつ迅速なシステム実装・更新を可能にし、地域の特性を生かしたまちづくりを可能にしていくだろう(図2)。

図2:都市OSが実現するスマートシティ社会の姿

 会津で誕生したサービスや市民中心のモデルが全国へ広まることは、もう目前である。「0から1へ」のフェーズが終わり「1から100へ」のフェーズがまさに始まろうとしている。いまから「春」の到来が楽しみだ。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、オープン系ERPや、ECソリューション、開発生産性向上のためのフレームワーク策定および各事業の経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、高度IT人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興による雇用創出に向けて設立した福島イノベーションセンター(現アクセンチュア・イノベーションセンター福島)のセンター長に就任した。

現在は、震災復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中からの機能分散配置を提唱し、会津若松市をデジタルトランスフォーメンション実証の場に位置づけ先端企業集積を実現。会津で実証したモデルを「地域主導型スマートシティプラットフォーム(都市OS)」として他地域へ展開し、各地の地方創生プロジェクトに取り組んでいる。