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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

「モデル化」と「協働」で進んできた会津若松市のデジタル化(前編)【第26回】

会津若松市長 室井 照平 氏に聞く8年間の成果

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長)
2020年3月26日

日本におけるスマートシティの取り組みにおいて、そのパイオニアの1人が会津若松市長の室井 照平 氏である。2011年の東日本大震災以降、8年にわたり前例のないチャレンジを続けてきた。折しも2020年4月からは「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」いわゆる「第2期地方創生総合戦略」が始動する。2020年1月時点で、すでに全国で約100の地域がスマートシティの取り組みに着手しているほか、計画中の自治体も多い。室井市長に、自治体がスマートシティを推進するうえでの考え方やリーダーシップについて聞いた。前後編に分けてお伝えする。(文中敬称略)

中村 彰二朗(以下、中村)  アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター長の中村 彰二朗です。実は室井市長を初めてお見かけしたのは、公式にお会いする前の2011年8月、東山盆踊りの直前のことでした。

室井 照平 市長(以下、室井)  東山盆踊りに参加するために呉服店で着付けを済ませ、店を出るところで眼光の鋭い人とすれ違ったので印象に残っています。それが中村さんとの出会いでした。

写真1:福島県会津若松市 市長 室井 照平 氏

中村  私は市長をポスターなどで拝見していましたので「市長がいらっしゃっている」とは思いましたが、その時点では面識はありません。その後の表敬訪問で公式な関係になりました。

 その際も、私の前職が米サン・マイクロシステムズであるとお伝えすると「サンはなぜJavaを無料にしたのですか?」と尋ねられました。オープンソースの本質を突いてくる鋭い質問をされる方だと驚きました。私からは「オープンフィロソフィーという哲学があり、対立構造を生み出さないためです」とご説明しました。

写真2:アクセンチュア・イノベーションセンター福島(AIF)センター長 中村 彰二朗

室井  あのときは「稼げたはずなのに、なぜ無料にしたのか?」という疑問を持っていたのですね(笑)。Javaにはじまり、「ITの標準化」やオープンソースについて意見交換をしました。「コストが安ければ標準化は早まる」。これは共通の思想だったように思います。

中村  そうですね。標準化の重要性は、その当時から話題に上るキーワードでした。

会津若松市民の「スマートシティ」認知度は90%以上

中村  会津若松市は8年にわたって「スマートシティ会津若松」の取り組みを継続されてきました。直近のスマートシティの取り組み状況と市民の認知度は、いかがでしょうか。

室井  まず、スマートシティ会津若松についての市民の認知度ですが、市民アンケートの結果では、「知っている」「名前は聞いたことがある」と回答した市民が90%を超え、広く認知されていることがわかりました。

中村  マーケティング理論でも認知・利用が30%を超えると、浸透が加速するといわれています。会津若松市ではすでに70代の2割近い方が会津若松+を利用されています(市民アンケート結果より)。市民への浸透や理解に、世代はあまり関係ないことが証明されつつあります。